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AHA 2009 in Orlando, Florida

2009.11.24 | 海外学会 | 学会・研究会 |

アメリカ合衆国心臓協会年次学術集会(American Heart Association, AHA)がフロリダ州オーランドで開催され、参加者一同大興奮でした。

オーランドでの開催は2年ぶりとなります(AHA 2007)。

昨年はNew Orleansでの開催でした(AHA 2008)。

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2009年11月15~18日にかけて開催されましたAHA 2009は予想されたことではありましたが、例年に比べて参加者が減少(当局の発表で29,000人とか)したようで、幾分寂しい学術集会となり、世界を模ったシンボルも心なし寂しげでした。

しかしAHAは循環器内科を志す臨床医・研究者にとって目標の一つであり、この場での発表は大変意義深いものです。本年、金沢大学医薬保健研究域臓器機能制御学・循環器内科グループから採択された演題は、教室オリジナル研究として、循環器内科藤野陽准教授による「心筋症に関する研究」、循環器内科坪川俊成助教による「心血管再生に関する基礎研究」、循環器内科大学院の多田隼人先生による「高コレステロール血症の分子機構に関する研究」、脂質講座野原淳特任助教による「高脂血症における核内遺伝子の役割」のうち3題が口述発表として採択されました。中でも多田先生の発表はRobert Levy Memorial Lecture: Genetics of Lipid Metabolismという大変格調高いセッションでの発表が行われました。

また、オリジナル研究と共に教室のアクティビティを示す、多施設共同研究では、林研至助教が参画する「ブルガダ症候群の分子遺伝学的研究」および山岸正和教授が参画する「ロスバスタチンの効果と糖尿病の関係に関するCOSMOS研究のサブ解析」および「ピタバスタチンの急性冠症候群に関するJAPAN-ACS研究のサブ解析」が採択されました。オリジナル研究、多施設共同研究とも複数が採択されましたことは、国内、国外を問わず、私達の研究への期待の高さが窺われます。

 


【金沢大学医薬保健研究域臓器機能制御学・循環器内科オリジナル研究】

Oral presentation

①Impact of Genetic Screening on the Development to End-Stage Phase in Hypertrophic Cardiomyopathy: From the Comparison of Clinical Course in Carriers With Thick Filament Mutations and Thin Filament Mutations
Noboru Fujino, Hidekazu Ino, Kenshi Hayashi, Katsuharu Uchiyama, Eiichi Masuta, Yuicihro Sakamoto, Toshinari Tsubokawa, Akira Funada, Akihiko Muramoto, Junichiro Yokawa, Masakazu Yamagishi

②Impact of PI3/Akt Pathway on Production of Vascular Endothelial Growth Factor and Associated Myocardial Salvage by Mesenchymal Stem Cell wtih Transient Overexpression of Heme Oxygenase-1
Toshinari Tsubokawa, Chiaki Nakanishi, Shotoku Tagawa, Shu Takabatake, Kensuke Fujioka, Kunimasa Yagi, Hidekazu Ino, Hatsue Ishibashi-Ueda, Masakazu Yamagishi

③Impact of Increased Catabolism of VLDL Remnant in Autosomal Recessive Hypercholesterolemia: A Stable Isotope Kinetic Study in vivo
Hayato Tada, Masa-aki Kawashiri, Kanazawa Univ, Katsunori Ikewaki, Yoshio Terao, Chiaki Nakanishi, Masayuki Tsuchida, Mutsuko Takata, Kenji Miwa, Atsushi Nohara, Akihiro Inazu, Junji Kobayashi, Hiroshi Mabuchi, Masakazu Yamagishi
Robert Levy Memorial Lecture: Genetics of Lipid Metabolism

Poster presentation

Impact of Functional Promoter Variant of XBP1 Gene on Lipid and Glucose Metabolism in Japanese Population
Atsushi Nohara, Tohru Noguchi, Hayato Tada, Chiaki Nakanishi, Masa-aki Kawashiri, Kunimasa Yagi, Akihiro Inazu, Junji Kobayashi, Masakazu Yamagishi, Hiroshi Mabuchi, Kanazawa Univ, Kanazawa, Japan


【多施設共同研究】
①Clinical Phenotype and Prognosis of Probands With Brugada Syndrome in Relation to SCN5A Mutation. – Japanese Brugada Syndrome Multicenter Registry Kenichiro Yamagata, Natl Cardiovascular Ctr, Suita, Japan; Minoru Horie, Shiga Univ, Otsu, Japan; Satoshi Ogawa, Keio Univ, Tokyo, Japan; Yoshifusa Aizawa, Niigata Univ, Niigata, Japan; Kengo F Kusano, Tohru Ohe, Okayama Univ, Okayama, Japan; Masakazu Yamagishi, Kanazawa Univ, Kanazawa, Japan; Naomasa Makita, Hokkaido Univ, Sapporo, Japan; Toshihiro Tanaka, Riken, Kobe, Japan; Takeru Makiyama, Masaharu Akao, Kyoto Univ, Kyoto, Japan; Nobuhisa Hagiwara, Tokyo Women’s Medical Univ, Tokyo, Japan; Ryoji Kishi, St. Marianna Univ Sch of Med, Suita, Japan; Yuko Yamada, Hideo Okamura, Takashi Noda, Kazuhiro Satomi, Kazuhiro Suyama, Naohiko Aihara, Yoshihisa Miyamoto, Shiro Kamakura, Wataru Shimizu, Natl Cardiovascular Ctr, Suita, Japan
Abstract Oral Session: AOS.406.02. Ventricular Arrhythmias: Brugada, ARVD/C and Others

②Plaque Regression in Patients With Diabetes Mellitus After Rosuvastatin Treatment: A Serial Intravascular Ultrasound Analysis From the COSMOS Study Tadateru Takayama, Takafumi Hiro, Div of Cardiology, Nihon Univ Sch of Med, Tokyo, Japan; Hiroyuki Daida, Dept of Cardiology, Juntendo Univ Sch of Med, Tokyo, Japan; Masakazu Yamagishi, Kanazawa Univ Graduate Sch of Med, Kanazawa, Japan; Atsushi Hirayama, Div of Cardiology, Nihon Univ Sch of Med, Tokyo, Japan; Satoshi Saito, Div of Cardiology, Keiai Hosp, Tokyo, Japan; Tetsu Yamaguchi, Toranomon Hosp, Tokyo, Japan; Masunori Matsuzaki, Div of Cardiology, Yamaguchi Univ Graduate Sch of Med, UBE, Japan; for the COSMOS investigators
Abstract Poster Sessions: APS.606.02. Challenging Issues in Cardiac Catheterization And Coronary Intervention

③Effect of Statin on Serum Matrix Metalloproteinase Levels as a Sign of Plaque Regression in Patients With Acute Coronary Syndrome: Subanalysis of JAPAN ACS Study
Katsumi Miyauchi, Hiroyuki Daida, Juntendo Univ, Tokyo, Japan; Takeshi Kimura, Kyoto Univ Graduate Sch of Med, Kyoto, Japan; Takafumi Hiro, Nippon Univ, Tokyo, Japan; Takeshi Morimoto, Kyoto Univ Graduate Sch of Med, Kyoto, Japan; Yoshihisa Nakagawa, Tenri Yorozu Hosp, Tenri, Japan; Masakazu Yamagishi, Kanazawa Univ Graduate Sch of Med, Kanazawa, Japan; Yukio Ozaki, Fujita Health Univ, Toyoake, Japan; Masunori Matsuzaki, Yamaguchi Univ Graduate Sch of Med, Ube, Japan
Abstract Poster Sessions: APS.601.04. Acute Coronary Syndromes

 


学会場では金沢大学循環器内科グループからは口述講演の3題を含めて、滞りなくの発表がなされました。

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心筋再生のテーマで発表し、日頃の英会話の実力を存分に発揮した坪川俊成助教。

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Levy Memorial Lectureセクションでの発表の機会を得た多田隼人先生は、得意の常染色体劣性遺伝性高脂血症の話題を発表し、多くの質問を受けることになりました。

特筆すべきは、横浜栄共済病院や福井循環器病院などの関連病院からの単独演題が例年にも増して多かったことで、日頃の研究成果を存分に出しえたものと推察いたします。

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横浜栄共済病院循環器内科の野末 剛先生による口述発表。

また、オーランドと言えば、ディズニーランドとケネディ宇宙センターが有名ですが、学会2日目(11月16日)、スペースシャトルが近隣のケネディ宇宙センターから発射されました。学会に参加された先生の中には、この瞬間を目視された方もおられたそうです。

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(写真は日本大学医学部循環器内科准教授 廣 高史先生のご厚意による)。

学会は11月18日の午前中で終了し、その後はこの格好で、いざ出撃と相成りました。

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なにはともあれ、多くの成果を発表する絶好の機会となりました。これからもこのパワーを示し続けていきたいものです。

第57回日本心臓病学会学術集会(2009年9月、札幌)

2009.10.13 | 学会・研究会 |

第57回日本心臓病学会学術集会(9月18日-20日)が札幌医科大学第二内科島本和明教授会長の下、北海道で開催されました。

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心臓病学会は学術発表とともに教育に力を注いでおり、循環器内科臨床医として、是非参加したい学会の一つとなっています。今回の学術集会に、本年度も複数の主要シンポジウムでの発表指名を受けました。循環器内科を標榜する私たちにとりまして、この上ない励みとなります。

私たちの教室から以下のように活発な研究成果発表が行われました。


 

シンポジウム
慢性心不全の治療ガイドラインを検証する(公募) 
金沢大学准教授・循環器内科 藤野 陽
座長: 筒井 裕之 (北海道大学大学院 医学研究科循環病態内科学)
百村 伸一 (自治医科大学付属さいたま医療センター 循環器科)

シンポジウム
ICDを用いた治療戦略と将来展望 (公募)
金沢大学講師・循環器内科 井野秀一
座長: 井上 博 (富山大学医学部 第二内科)
奥村 謙 (弘前大学大学院医学研究科 循環呼吸腎臓内科学)

シンポジウム
心房細動の治療戦略(公募)
金沢大学助教・循環器内科ICU 舟田 晃
座長: 相澤 義房 (新潟大学大学院 循環器分野)
三田村 秀雄 (東京都済生会中央病院 循環器科)

日本心臓病学会・日本心臓血管外科学会ジョイントシンポジウム
「エビデンスに基づいたPCI,CABGの適応」
演者: 山岸正和(金沢大学)/一色高明(帝京大学)
髙本眞一(社会福祉法人 三井記念病院)/北村惣一郎(国立循環器病センター)
座長: 小川久雄(熊本大学)/ 坂田隆造(京都大学)

招聘講演座長
Valentin Fuster (Mt. Sinai School of Medicine, NY, USA)
「不安定プラーク」
座長:  山岸 正和(金沢大学医薬保健研究域医学系 臓器機能制御学・循環器内科)


 

土田真之先生の「大規模地震と循環器疾患関連」論文

2009.07.01 | Publications | 研究 |

大規模地震と心血管疾患の発生について考察を行った土田真之先生の学術論文がCirc J誌に掲載されています。


Impact of severe earthquake on the occurrence ofcj acute coronary syndrome and stroke in a rural area of Japan.
Tsuchida M, Kawashiri MA, Teramoto R, Takata M, Sakata K, Omi W, Okajima M, Takamura M, Ino H, Kita Y, Takegoshi T, Inaba H, Yamagishi M.
Circ J. 2009 Jul;73(7):1243-7. Epub 2009 May 13. icon_doi

 


 

本論文は過日、北陸中日新聞の第一面を飾りました。

>土田真之先生が北陸中日新聞の一面を飾りました!

 

今回、本論文に対して、日本循環器学会誌からeditorial commentが追記されました。  

Hata S. Cardiovascular disease caused by earthquake-induced stress: psychological stress and cardiovascular disease. Circ J. 2009 Jul;73(7):1195-6. icon_doi

 

我が国において、いつ、どこで発生しても不思議ではない大規模地震時における循環器系疾患の発生増加の実態と対策にまで言及された素晴らしいコメントです。今回の我々の論文に対してコメントを掲載されました日本循環器学会に改めて敬意を表します。

ダリウォール先生の診断セミナー

2009.06.24 | 教育 |

2009年6月19日、20日の両日に渡って、ティアニー先生のお弟子さんであるダリウォール先生を招聘し、臨床教育セミナーを開催しました。

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ダリウォール(Dr. Gurpreet Dhaliwal)先生はカリフォルニア大学サンフランシスコ校の極めて優秀な臨床医であり、教育者でもあります。ゆっくり、わかりやすく内科診断学のプロセスをレクチャーして頂きました。

参加者は多くは本学の学生さんでしたが、当院の研修医はもちろん、関東からの学生さん、研修医さんもいらっしゃいました。

症例検討は6症例(1例は本学5年生,4例は松村、1例は山岸教授が呈示)を行いました。診断は最後まで明かさない形式でしたが、ダリウォール先生は全ての症例において、病歴、身体所見の情報から理論的に診断に至る過程を見事に披露してくれました。さらに講演では、診断の過程、expertの域に達するには何が必要か、わかりやすく説得力のある講演をされました。

 


6月19日(金曜日)

10:00 Case study 1

16:00 Case study 2

18:00 Case study 3

6月20日(土曜日)

10:00 Case study 1

12:30 Lecture: Process of diagnosis

13:30 Case study 2


以下は参加者の感想です。


昨日、今日ととても有意義な日々を過ごせました。先日の勉強会に参加することができ、本当に貴重な体験をしました。ダリウォール先生が実に明解に、論理的に、エレガントに症例の真相に迫っていく姿に憧れるともに、ユーモア溢れる松村先生の日本語訳を聞くのがまた、楽しくて仕方ありませんでした。


昨年から1年経った今、昨年に比して非常にケースの波に乗りながら理解してゆくことができ、非常に楽しかったです。そして、今回はオプショナルのレクチャーで、expertになるには?などといった、ズバッとしたタイトルのものがあり、本当に刺激になりました。彼が良き匠であり、更にそのような道に通ずるための哲学を語って下さることに、大変感動致しました。何より彼のステキなお人柄を感じさせられました。また、その後のケースにそういう観点に視点をおきながら、臨むこともでき、更に面白いものになりました。もう1ケースあっても良かったなぁ、と最後は少々物足りない気分にさえなってしまいました。


来年も招聘する予定です.お楽しみに!!

リウマチ・膠原病内科
松村正巳

第69回アメリカ糖尿病学会(ADA Scientific meeting)

2009.06.18 | 海外学会 | 学会・研究会 |

第69回アメリカ糖尿病学会(ADA Scientific meeting)へ参加し、奮闘して来ました。

ADAは糖尿病の世界では最大級の学会で、毎年高いレベルの発表がなされることで注目を集めています。本年も去る6月5日から9日までニューオリンズで開催され、私、八木邦公を筆頭に、山秋直人先生、伊藤直子先生、森由紀子先生の4名で参加してきました。さすがに今年はインフルエンザの影響で日本人の参加や発表の辞退が多く、例年の“立錐の余地なし”という状況程ではなかったのですが、むしろその分空間的にもスケジュール的にも余裕がありました。

ニューオリンズはいつも賑やかです。

 

今回は研究室の演題として3題が採択され、ベイラー医科大学に留学中の中條大輔先生の演題を合わせて、4題の発表でした。私は、JAPAN-ACSスタディのサブ解析を発表しました。これは糖尿病患者の冠動脈リモデリングにはRAS系阻害剤、特にACEIが有効に作用するとの結果得たもので、先の日本糖尿病学会総会の発表で注目された演題でもあります。山秋直人先生はフィブラート薬剤のうち、Bezafibrateがアディポネクチン上昇作用が強いとの成績を示しました。伊藤直子先生はCETP欠損症例でのアディポネクチンとHDLの関係についてで、アディポネクチンがインスリン抵抗性改善を介してHDLを上昇させる効果はCETP程強くはないことを確認しています。中條先生は留学先の膵島移植免疫についての正常人での検討で、1型糖尿病において膵島破壊につながるとされるTリンパ球が実は正常人にも認められる事を示しました。

ポスター発表でしたが、大変緊張しました。

 

さて、本会の目玉は何と言っても6月8日に発表された、BARI-2D trial(The Bypass Angioplasty Revascularization Investigation (BARI) 2 Diabetes)でしょう。無症候性糖尿病で冠動脈造影の判断から、血管形成術が必要となった症例においては、内科治療、血管形成術でも生命予後や死亡率では差が付かなかったという発表で、血糖管理内容でも差が付かなかった事から糖尿病専門医が単なる血糖調節医であってはならない事や、冠動脈疾患治療における糖尿病専門医による心血管病変管理の比重が高まる事を示しています。

話題のセッションは大変な賑わいでした。

 

ここ数年ADAの方向性について“基礎に偏り過ぎている”との批判があったのですが、今年はバランスがよく臨床についてもこれからの方向性がはっきり示されている会になっていました。今回は朝5時から夕方6時まで学会に参加し、非常に有意義な時間を過ごせました。また、糖尿病専門医も“心血管専門医として進化”する必要があることを明確に示した学会でもありました。これは、筆者が糖尿病と関わり始めた時から、目指してきたもので、改めて意を強くした次第です。

我が家の糖尿病専門医(志望も含む)集団