女性内科医が活躍しています!

女性内科医が活躍しています!女性内科医が活躍しています!

女性内科医が活躍しています!

この座談会は2016年4月に開かれました。左より坂田、大平、鈴木。

坂田憲治金沢大学循環器病態内科学講師・医局長 金沢大学附属病院循環器内科

  • 平成9年
    入局
    金沢大学附属病院、恵寿総合病院、市立輪島病院、珠洲市総合病院
    石川県立中央病院、金沢循環器病院などに勤務
  • 平成20年
    米国スタンフォード大学留学
  • 平成25年より
    現職

鈴木華恵金沢大学附属病院リウマチ膠原病・腎臓内科

  • 平成21年
    入局
    石川県立中央病院にて初期研修を終え、金沢大学附属病院勤務
    JCHO金沢病院、厚生連高岡病院、済生会金沢病院、藤田記念病院などを経て現職

大平美穂金沢大学附属病院循環器内科

  • 平成24年
    入局
    石川県立中央病院にて初期研修を終え、金沢大学附属病院勤務
    小松市民病院、済生会金沢病院などを経て現職

坂田:おはようございます。今日は当院の内科で活躍中の二人の女性医師に来て頂きました。私たちは今、国や自治体、それぞれの医療機関レベルでも推し進められている医療者の男女共同参画について医局をあげて取り組んでいるところです。この問題は医療従事者が子育てや介護、身体的・精神的ハンディなどでこれまで通りの勤務が難しくなってしまった場合など様々な状況を含んでいますが、今回は子育てをしながら内科医として勤務しているお二人と女性医師が活躍できる環境づくりについてディスカッションしていきたいと思います。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

坂田憲治

鈴木:私は医師11年目になります。石川県立中央病院で2年間の初期臨床研修を終えた後に臓器機能制御学教室(現 循環器病態内科学教室)に1年間後期研修医として勤務し、その後リウマチ膠原病・腎臓病を学ぶために同教室に入局しました。4年目からは関連病院であるJCHO金沢病院、厚生連高岡病院などに勤めました。

大平:私は7年目になります。初期研修は市中病院と金沢大学附属病院で行いました。重症の循環器疾患の治療を深く学びたいという思いから大学病院を選びました。初期研修を終え入局した後は、1年半かけて市中病院でカテーテル治療を中心に後期研修を行いました。

初期・後期研修で学ぶ鑑別診断のチカラ

坂田:私たちの教室は「総合力ある内科専門医を目指す」のテーマを掲げて、内科医として確かな地力を身につけながら高い専門性を学ぶためのプログラムを常にブラッシュアップしています。医師人生は約40年と非常に長いわけですが、内科医としての総合力というのは継続的な学びと実践のサイクルを確立することで形成されていくものだと考えています。それぞれ専門とする科は異なりますが、内科医としての基礎を学んだ時期についてはどうでしたか?

鈴木華恵

鈴木:初期研修医の時に石川県立中央病院でたくさんの救急症例・入院症例を経験し、その後後期研修の時に松村正巳先生(現 自治医科大学総合診療部教授)から系統的に病歴と身体所見をとること、患者さんの全身を診ることの重要性を学びました。また松村先生の指導のもと、診断の神様と言われるローレンス・ティアニー先生(カリフォルニア大学サンフランシスコ校内科学教授)に症例のプレゼンテーションをする機会にも恵まれました。テレビ番組でも話題のドクターGのように患者さんから得た情報から診断を絞っていくという思考過程を研修医時代に系統的に学べたことは今でも大きな力になっています。

坂田:昨年も松村先生、ティアニー先生、そして感染症のレジェンドである青木眞先生による医学生や若手医師への症例勉強会がリウマチ膠原病研究室の主催で開かれましたね。講義室が満員になり議論も盛り上がりました。今後も次世代の医師に系統的な診断学を学べる場を積極的に作っていきたいと考えています。

大平:金大病院での研修では、診療の中での小さな疑問から治療方針に関わる大きな決定まで常に上級医に相談できる環境にあります。いきなりベテランの先生に質問するのではなく、少し上の先輩医師に相談する形でコンサルトができる、いわゆる屋根瓦式なので、細やかな指導を受けることができたと思っています。また、全科カンファランスがあるので、各内科診療科の専門医に指導を頂きながら研修を進めることができました。循環器というとカテーテル治療や視覚的に派手な検査に目が行きますが、患者さんの全身状態や血糖コントロール、脂質管理、腎機能、肺機能、最終的には退院後のQOLにまで目を向けることの大切さを各科の先生方に教えて頂きました。専門家が集まる大学病院で「木を見て森を見ず」ではいけないことを教え込まれたのは、総合医局ならでは包容力があったからかなと思っています。

専門性の取得と女性医師としての生き方

坂田:お二人とも結婚されて育児も頑張っておられますが、専門性を身につける上でどのような環境が必要ですか?

鈴木:市中病院への勤務の間に結婚し出産を経験したので、本当に忙しい毎日ですが、派遣された病院が専門医の教育病院が多かったこともあり、出産後にリウマチ専門医、腎臓専門医の資格を得ることができました。現在も時短勤務ですが専門性の高い業務であり、周りの先生方の理解・支援があるからこそ継続できていると思っています。

坂田新内科専門医制度がまもなく開始されますが、医局としてもこの点は大変重要だと考えています。女性医師に限らず、関連病院と協力して若手医師が適切な時期に認定施設において専門的な経験を十分に積み、確かな実力を得て専門医が取得できるよう医師配置のバランスを配慮していきます。とは言え、新内科専門医制度をめぐる情勢は流動的ですので制度の目的や詳細を把握・分析した上で、意欲ある若手医師の内科専門医への道筋を医局がサポートするべきと考えています。

金沢大学循環器病態内科学が提唱する女性医師トータルキャリアサポート

大平:関連病院勤務中に妊娠・出産を経験しましたが、緊急が多い科にも関わらず、周囲の先生やスタッフに協力頂き、育児休暇を取ることが出来ました。これには医局員として派遣されている背景が大きかったと感じています。大学病院に来てからは、心エコー部門で多くの症例を経験しながら、オンオフがはっきりした勤務体制になっています。子どもが小さいうちは当直も免除して頂いています。育児を応援して頂きながら働ける環境に大変感謝しています。

坂田:平成28年の石川県医師会データによりますと、県内の医療機関で働く女性医師の91%は勤務制限がない状態、つまり労働時間の短縮や当直・オンコールの免除がないまま勤務しています。その内、約7割は20歳台、30歳台の子育て世代です。サポーターの仕事量の増加や根本的な医師不足問題もあり、勤務制限の実現が困難な現実が浮き彫りとなっています。これを解決するためには、安定した医師供給と管理職側の意識改革が重要です。今後、医局の運営を担って行く人材への教育として、女性医師支援に限らず男女共同参画の実現が医療全体の安全と質の向上に繋がっていることを学んでもらう取り組みを始めています。医局は大学と関連病院を含めた1つのファミリーですから、医師人生のある時期において、配慮のある勤務体制を調整することは十分に行える環境にあります。

女性医師にとって内科は忙しすぎる!?

大平美穂

大平:私は北陸出身ですが中国地方の大学を卒業しました。学生の頃から特に急性期治療に興味がありました。6年間離れていたため、ほとんど知り合いもいない状況でしたので入局に当たっては不安もありましたが、初期研修先だった関連病院の先生方の後押しもあって内科の道を選びました。初期・後期の研修医時代にはかなりハードな時期もありましたが、人の命に関わる学問や仕事である以上、集中して力をつける時期が必要だったと思っています。これから金沢や北陸に戻ってくる女性医学生には、内科にはたくさんの喜びや夢があることを伝えたいです。

坂田:この10年で新卒医師に占める女性医師の割合は毎年31~34%(医師国家試験データより)と大きな変化はありませんが、毎年多くの女性医師が誕生しています。内科学は医学の根幹を担う分野ですので、学問としても、また急性疾患への対応、慢性疾患の患者さんと向き合う医療としても大きな役割を担っています。働きにくさや継続的な支援がないことを理由に女性医師が内科を敬遠してしまうのはとても残念なことです。

鈴木:内科を含め何科であっても本当にその道を極めようとする過程は厳しいものですし、仕事の忙しさは個人のタイムマネージメント力にかかっていると思います。またどのような状況であっても、全力で頑張ろう、と思っている人へ適切なサポートをしてくれるのが医局のよいところだと思います。医局の子育て支援ももちろん必要ですが、キャリアの途中で妊娠・出産・育児というステージを迎えた時に親身に協力してくれるのは、それまでの医師人生で築いてきた信頼しあえる仲間と上司の先生です。

坂田:そうですね。最近では全国的にも女性医師の離職防止や復職支援の取り組みが活発になってきているようです。全国的な女性外来の開設など女性医師の活躍の場はますます広がっているように感じますし、社会が求めている全人的な医療方向性にはまさに女性内科医の力が必要不可欠だと思います。私たちも女性医師を護り育てる伝統的な姿勢を基礎に、よりアクティブに女性医師が北陸、日本で活躍し、そして世界に羽ばたいていける環境づくりと人材育成に力を入れていきます。

金沢大学循環器病体内科学の女性医師支援制度

研究者、教育者、管理職としての女性医師の役割

坂田:臨床と子育ての両立に忙しい毎日だと思いますが、将来のビジョンはいかがですか?

鈴木:まだ子どもが小さく、急な体調不良などで思うように仕事ができない場面もありますが、できる範囲で今の仕事を継続し、将来的には専門性を生かした臨床を続けていきたいと考えています。

大平:今はどうしても検査メインになってしまいますが、将来的にはまた急性期医療に携わりたいと考えています。病態を理解する手段として心エコーは非常に役に立つツールですので、今の時間は自分の診療レベルを押し上げ、キャリアップにも繋がると考えて日々励んでいます。また、これから循環器内科を目指してくれる女性医師のサポートもしていきたいと思っています。

坂田:もう一つ、女性医師は研究者や管理職、また教育者として非常に優れた面を持っていると感じています。結婚するまでは学会発表など学術活動も頑張っていたけど・・、という方も多くおられますが、私たちのグループには結婚・出産後も積極的に臨床研究を行い、インパクトの大きい論文を市中病院から発表されている先生もいます。

大平臨床だけではなく、リサーチマインドを持って研究に取り組んでいく姿は理想的です。心エコーを毎日やっていると、心臓という小さな臓器にまだまだ解明されていない現象がたくさんあることに驚かされます。超音波装置自体の技術革新も目覚ましくて、国民病となりつつある心不全や弁膜症の評価など、これから取り組むべきテーマがたくさんあります。

坂田:女性医師が相対的に増えて行く中で、必然的に女性の管理職のニーズも増えています。しかし、女性医師がより専門性を高め、役職や収入を得られるようなキャリアを築くためには、周囲の支援に頼るだけではなく、自ら発言・発表し、与えられたチャンスを逃さない積極性も必要です。また、一緒に働くスタッフは当人がどのようなキャリアを送りたいのか決め付けず、継続的に話し合うことが大切だと思っています。周囲のサポートと女性医師のモチベーションこそが明日の医療を支えるといっても過言ではないでしょう。

鈴木:医局や関連病院にはたくさんの女性の先生がおられ、様々な環境でそれぞれに活躍されています。これまでの出会いの中で幾人かのロールモデルとなるような先生に出会うことができました。家庭と両立しながら仕事を継続していくためには、自分が何をしたいか、どのような医師になりたいかをはっきりさせることが重要だと感じています。成長した自分が次の世代のロールモデルになることができればと思っています。

研究者、教育者、管理職としての女性医師の役割

坂田:女性医師の支援対策には当事者から意見を集めるシステムづくりが重要です。どういう支援がこれまで有効だったか、またこれからの時代に即した支援の形はどうあるべきか、これからも医学生や様々な世代・立場の女性医師、男性医師と話し合いながら社会に貢献できる医師体制をつくりあげていきたいと決意しています。 本日はお二人ともありがとうございました。

鈴木・大平:ありがとうございました。

当教室の女性医師支援体制についてご質問があれば問合せフォームからお願い致します。

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