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ACC 2012 in Chicago, Illinois

2012.04.13 | 海外学会 | 学会・研究会 |

2012年3月24日~27日までアメリカ合衆国シカゴで開McKesson-Medical-Imaging-at-ACC-2012催されたアメリカ合衆国心臓学会(American College of Cardiology, ACC)学術集会に金沢大学臓器機能制御学・循環器内科関連から演題が多数採択され、発表が行われました。

シカゴでの開催は2008年以来です。過去のACC記事も参照してください。

ACC 2011 in New Orleans, Louisiana

ACC 2010 in Atlanta, Geogia

ACC 2009 in Orlando, Florida

ACC 2008 in Chicago, Illinois

時代は流れているとはいえ、ACCは私たちが目指すべき学術集会でもあり、毎年複数の演題が大学、関連病院から発表されるのは注目されます。

 

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特徴的な建築物が並ぶシカゴ市街

シカゴトリビューンやトランプタワーが有名です。

昨年(ACC 2011 in New Orleans, Louisiana)は、アメリカ合衆国の経済不況、欧州でのユーロ危機、そして何より、我が国での東日本大震災などの悪条件が重なり、アメリカ国内はもとより海外からの参加者が減少したため、少々寂しい状況でした。しかし、今回はACCの努力により、プログラムの再編などが効を奏して再び盛会に蘇ったようです。何より、画像診断関係の大型機器展示が復活するなど雰囲気が昨年と全く違っていました。

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今回の学会では、企業展示も賑やかさを取り戻し、学会復活を印象づけていました。

ACCは心臓血管専門診療に従事する専門諸家の教育を重視していますので、教育関連のプログラムが数多く盛り込まれているのが特徴です。まず、開会講演では、Simon Dack(旧Am J Cardiol, 現在のJACCの創始編集者)記念講演としてEugene Braunwald氏が、彼の虚血性心疾患研究の歴史を語りました。TIMI研究の代表者として、またTextbook of Cardiovascular Medicineの主任著者としても知られる彼の講演は、日本からの参加者にも大きなインパクトがあったようです。興味がありましたのは、彼は講演の最後に、心筋再生への夢を語っていたのですが、講演終了直後のLate braking clinical trialで、心筋再生の臨床試験の一つの結果が公開されたことです。この臨床試験そのものはnegativeな結果でしたが、プログラム構成の巧みさには感嘆した聴衆も多かったのではないでしょうか。

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開会式後の記念講演を行ったEugeun Braunwald氏

先日の福岡での日本循環器学会では体調不良とのことでビデオ出演でしたが、依然お元気なようです。写真中央が故Simon Dack氏。

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Braunwald氏の講演を受けてPerin教授により発表された心筋再生の臨床研究発表

残念ながら今回の結果はnegativeでした。


金沢大学循環器内科グループ発表の一番手は、石川県立中央病院勤務時代にデータを蓄積し発表にこぎつけた、金沢大学臓器機能制御学・循環器内科(大学院生)の吉田昌平先生でした。吉田先生は学生時代にクリクラでDuke大学での短期留学の経験もあり、持ち前の性格も相まって、堂々のポスター発表をこなしていました。

Poster presentation

Shohei Yoshida, Kenji Miwa, Kenshi Hayashi, Masa-aki Kawashiri, Honin Kanaya, Masakazu Yamagishi.
Impact of Combined Use of Optical Coherence Tomography and Virtual Histology Intravascular Ultrasound in Assessment of Stable and Unstable Coronary Plaques

後期循環器研修の一環としてローテ―トしました石川県立中央病院での症例を中心とした、冠動脈プラークの評価に関する臨床研究です。昨年の富山赤十字病院の吉田太治先生の発表に続いての、この分野での発展を提示しました。

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ポスターでの討論を繰り広げる吉田昌平先生

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得意の冠動脈粥腫の画像診断に関する話題だけに、難なくこなしていたようです。

尚、吉田先生が執筆した「複雑合併症を呈したたこつぼ心筋症」論文のInt J Cardiol (IF>6.0)への掲載も決まり、大変意気が挙がっているところです。


続いては、やはり国立循環器センターでのレジデントとして勤務した時から温めていたデータを発表した金沢大学臓器機能制御学・循環器内科(大学院生)の永田庸二先生でした。秘めた力を発揮し、ポスター掲示直後は一斉に注目を集めていました。

Poster presentation

Youji Nagata, Hiroshi Takaki, Masakazu Yamagishi.
Prevalence and Clinical Features of Exercise Induced ST Elevation in Non-Q Leads: A Single Center Experience for 5.5 year in Japan

運動負荷テスト時にみられる心電図ST上昇症例の臨床的検討をまとめた発表でした。

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両側にもはみ出るほど超特大のポスターを作成し、注目を集めた永田庸二先生


金沢大学臓器機能制御学・循環器内科坪川俊成先生tsubokawaは、ストロングスタチンの一つでありますピタバスタチンが間葉系細胞において、hemeoxygenase-1の産生を増強し細胞保護効果を示すことを初めて公表しました。急性冠症候群に対するスタチン製剤の早期効果の一つを説明できるのではないかと考察しています。坪川先生のポスターは他に比べると質素に仕上げられていました。シカゴは少々肌寒い気候でしたが、恐らく気温の低さなど坪川先生には無関係であったものと想像されます(坪川先生は都合で不参加でした)。

Poster presentation

Toshinari Tsubokawa, Chiaki Nakanishi, Shu Takabatake, Tetsuo Konno, Kenshi Hayashi, Masa-aki Kawashiri, Masakazu Yamagishi.
Impact of Pitavastatin Pretreatment on Survival and Functional Activities of Mesenchymal Stem Cell: Possible Implication for Cell Transplantation Therapy

ご存知、金沢大学臓器機能制御学循環器内科で、研究グループで先進医工学研究室の室長を務めております、坪川俊成先生によります、循環器再生医学に関する発表でした。何かと話題の多い坪川先生ですが、今回は、骨髄由来の間葉系幹細胞をスタチンで前処理することによる、細胞の高機能化を目指した研究であり、循環器再生医学の一翼を担うものと期待されます。尚、直前に開催されます日本循環器学会学術集会でのシンポジウムでの演者としても指名されています。


林研至先生は心房細動例での遺伝子異常の機能解析を、Na、K両チャンネルの面から進めています。

Poster presentation

Kenshi Hayashi, Hidekazu Ino, Noboru Fujino, hayashi2Tetsuo Konno, Toyonobu Tsuda, Masa-aki Kawashiri, Masakazu Yamagishi.
Impact of Potassium Channel Gene Mutations on Occurrence of Lone Atrial Fibrillation

孤発性心房細動におけますカリウムチャネルの遺伝子変異の影響をまとめた研究発表でした。林先生は、直前に開催されます日本循環器学会学術集会でのシンポジウムでの演者にも指名されており、我が国代表する分子不整脈学の若手のリーダーとなりつつあります。この後の発展が益々期待されます。尚、このポスターセッションは解説付きのセッションです。

特に女性から注目されていたのが印象的でした。

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何故か、今回は特に女性の注目を集めていた林研至先生

今回の、学会では高畠周先生が、長年取り組んできました血管内皮前駆細胞を補足する新型ステントの開発に関する研究を口述発表しました。既に日本循環器学会のプレナリーセッションで発表していたとは言え、堂々の発表で、パネリストの熱い討論を誘っていました。

Oral presentation

Shu Takabatake, Toshinari Tsubokawa, Takehisa takabatake2Matsuda, Masakazu Yamagishi.
A Novel Method for Capturing Endothelial Progenitor Cells (EPCs) by Coronary Stents: Application of Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF)-bound Platform

内皮前駆細胞を捕捉することより再狭窄を減じる可能性のある新しい概念のステントの開発に関する研究発表です。従来のCD34を応用したステントの3歩先を進む研究として期待されています。高畠先生に直前の日本循環器学会学術集会(福岡)でのプレナリーセッションの演者としても指名されており、これに続きます快挙です。尚、高畠先生にとりましては、初の海外での英語口述発表でした。

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今回は指定討論者が予め決められており、活発な議論が繰り広げられました。

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イタリアから参加した指定討論者。この話題は2012年3月23日付の読売新聞全国版でも報道されています。

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また、当教室員として小倉記念病院で研修中の野村章弘先生と同級の中橋卓也先生も、同病院でのデータをまとめてポスター発表されていました。

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当教室から小倉記念病院での循環器専門医研修中の野村章弘先生
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中橋卓也先生(金沢大平成18年卒)

各々虚血性心疾患、アミロイド心臓の話題を発表していました。


この記事を執筆中に、CNNヘッドラインニュースで、元副大統領のDick Cheney氏が73歳で心臓移植を受けたことが報道されました。彼は1990年の湾岸戦争の時の国防大臣で、既にその時バイパス手術を受けています。また、興味ある報道として、糖尿病の治療には外科的な消化管切徐による体重減少が最も効果的ではないかという話題も取り上げらていました。今回の学会でのLate braking clinical trialの一つを受けての報道でしょうが、、、、。

さて、今回の学会参加の収穫の一つとして、アメリカ心臓学会機関誌(Journal of Americnan College of Cardiology, JACC)との結び付きが挙げられます。まず、当教室の山岸正和教授がCardiosource extract JAPAN掲載としてDeMaria氏とinside JACC討論を行いました。日本循環器学会開催中にも行われましたが、今回は小倉記念病院の曽我芳光先生と登坂淳先生をお招きし、最近JACCに掲載された末梢血管治療成績の論文についての討論を行いました。

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Exhibition会場前の特設スタジオでの収録前のメークアップで、女性担当者からジャッキーチェンに似ていると評判の曽我芳光先生、登坂淳先生(小倉記念病院)を囲んでの意義ある討論がなされました。(左端がDeMaria氏、右端が山岸教授)。勿論、本番では真剣な表情で臨み、一回でOKがでました。尚、日本循環器学会開催中に収録された分を含めて、順次Cardiosourse extract JAPANのサイトで公開予定です。

また、続いて、JACCの編集委員会ミーティングにも参加する機会があり、本年から、JACC, JACC imaging, JACC interventionsに続いて、JACC Heart failureが創設されることが発表されました。日本の優秀論文賞に相当するSimon Dack Awardに日本から北風政史先生(国立循環器病研究センター)が選ばれておられました。DeMaria氏によりますと、日本からの論文は質が高く、これからもどんどん掲載したい?とのことでした。

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Editorial Meetingでの発表を行うDeMaria氏。彼の人柄から、日本との信頼関係は厚いようです。

ACCは2013年サンフランシスコ、2014年サンディエゴでの開催が決まっているようです。今年のアメリカ心臓協会(AHA)学術集会がロスアンジェルスで開催されることを含め、やはりアジアとの連携を意識しての会場選定でしょうか?アメリカでの学会はその他の地域では味わえない何とも楽しい雰囲気の中で進んでいきます。特に若い先生方の応募をお勧めします。

当教室関連講座、教室OBの先生方が相次いでご栄進されました

2012.04.02 | 医局行事 |

当教室関連の寄付講座、金沢大学大学院医学系研究科脂質研究講座教授、小林淳二先生が、この度4月1日から金沢医科大学総合医学講座の主任教授にご栄進されることとなりました。私たちの教室と共に益々の発展を期待するところです。

小林淳二先生のここ1年の御業績

1.Tada H, Kawashiri MA, Ikewaki K, Terao Y, Noguchi T, Nakanishi C, Tsuchida M, Takata M, Miwa K, Konno T, Hayashi K, Nohara A, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M.
Altered metabolism of low-density lipoprotein and very-low-density lipoprotein remnant in autosomal recessive hypercholesterolemia: results from stable isotope kinetic study in vivo.
Circ Cardiovasc Genet. 2012 Feb 1;5(1):35-41. Epub 2011 Dec 9.

2. Ohtani R, Inazu A, Noji Y, Wakasugi T, Miwa K, Tada H, Kawashiri MA, Noguchi T, Nohara A, Kobayashi J, Koizumi J, Yamagishi M, Mabuchi H.
Novel mutations of cholesteryl ester transfer protein (CETP) gene in Japanese hyperalphalipoproteinemic subjects.
Clin Chim Acta. 2012 Mar 22;413(5-6):537-43. Epub 2011 Nov 19.

3. Kawashiri MA, Nohara A, Noguchi T, Tada H, Nakanishi C, Mori M, Konno T, Hayashi K, Fujino N, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M.
Efficacy and safety of coadministration of rosuvastatin, ezetimibe, and colestimide in heterozygous familial hypercholesterolemia.
Am J Cardiol. 2012 Feb 1;109(3):364-9. Epub 2011 Nov 22.

4. Tada H, Kawashiri MA, Ohtani R, Noguchi T, Nakanishi C, Konno T, Hayashi K, Nohara A, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M.
A novel type of familial hypercholesterolemia: double heterozygous mutations in LDL receptor and LDL receptor adaptor protein 1 gene.
Atherosclerosis. 2011 Dec;219(2):663-6. Epub 2011 Aug 10.

5. Nakajima K, Nakano T, Tokita Y, Nagamine T, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Stanhope KL, Havel PJ, Okazaki M, Ai M, Tanaka A.
Postprandial lipoprotein metabolism: VLDL vs chylomicrons.
Clin Chim Acta. 2011 Jul 15;412(15-16):1306-18. Epub 2011 Apr 19. Review.

6. Noguchi T, Kobayashi J, Yagi K, Nohara A, Yamaaki N, Sugihara M, Ito N, Oka R, Kawashiri MA, Tada H, Takata M, Inazu A, Yamagishi M, Mabuchi H.
Comparison of effects of bezafibrate and fenofibrate on circulating proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 and adipocytokine levels in dyslipidemic subjects with impaired glucose tolerance or type 2 diabetes mellitus: results from a crossover study.
Atherosclerosis. 2011 Jul;217(1):165-70. Epub 2011 Feb 22.

7. Kawashiri MA, Kobayashi J, Nohara A, Noguchi T, Tada H, Nakanishi C, Inazu A, Mabuchi H, Yamagishi M.
Impact of bezafibrate and atorvastatin on lipoprotein subclass in patients with type III hyperlipoproteinemia: result from a crossover study.
Clin Chim Acta. 2011 May 12;412(11-12):1068-75. Epub 2011 Feb 24.

8. Mabuchi H, Nohara A, Noguchi T, Kobayashi J, Kawashiri MA, Tada H, Nakanishi C, Mori M, Yamagishi M, Inazu A, Koizumi J; Hokuriku FH Study Group.
Molecular genetic epidemiology of homozygous familial hypercholesterolemia in the Hokuriku district of Japan.
Atherosclerosis. 2011 Feb;214(2):404-7. Epub 2010 Nov 13.

9. Kobayashi J, Noguchi T, Nohara A, Mabuchi H.
Comparison of the effects of losartan vs. ramipril on several adipocytokines and vascular remodeling biomarkers.
Hypertens Res. 2011 Jan;34(1):52-4. Epub 2010 Nov 25. No abstract available.


 

当教室OBでもあり、金沢大学総合診療部准教授、野村英樹先生が、この度4月1日から杏林大学医学部救急医学教室教授にご栄進されることとなりました。「専門性ある総合内科医」として私たちの教室と共に益々の発展を期待するところです。
野村英樹先生のここ1-2年の御業績

1. Kawano M, Saeki T, Nakashima H, Nishi S, Yamaguchi Y, Hisano S, Yamanaka N, Inoue D, Yamamoto M, Takahashi H, Nomura H, Taguchi T, Umehara H, Makino H, Saito T.
Proposal for diagnostic criteria for IgG4-related kidney disease.
Clin Exp Nephrol. 2011 Oct;15(5):615-26. Epub 2011 Sep 7.

2. Moriuchi T, Oka R, Yagi K, Miyamoto S, Nomura H, Yamagishi M, Mabuchi H, Kobayashi J, Koizumi J.
Diabetes progression from “high-normal” glucose in school teachers.
Intern Med. 2010;49(13):1271-6. Epub 2010 Jul 1.

3. Miyagi K, Kiyonaka S, Yamada K, Miki T, Mori E, Kato K, Numata T, Sawaguchi Y, Numaga T, Kimura T, Kanai Y, Kawano M, Wakamori M, Nomura H, Koni I, Yamagishi M, Mori Y.
A pathogenic C terminus-truncated polycystin-2 mutant enhances receptor-activated Ca2+ entry via association with TRPC3 and TRPC7.
J Biol Chem. 2009 Dec 4;284(49):34400-12. Epub 2009 Oct 7.

ここ最近の多施設共同研究の進み具合

2012.03.30 | 研究 |

金沢大学臓器機能制御学教室では、幅広い研究意識を持って基礎、臨床研究を進める意味から、多施設共同研究にも多く参加いたしております。ここ最近、臨床、基礎的研究論文が相次いで発表されましたので、紹介させて頂きます。

 


1.Miyauchi K, Daida H, Morimoto T, Hiro T, Kimura T, cjNakagawa Y, Yamagishi M, Ozaki Y, Kadota K, Kimura K, Hirayama A, Kimura K, Hasegawa Y, Uchiyama S, Matsuzaki M; for the JAPAN-ACS Investigators.
Reverse Vessel Remodeling But Not Coronary Plaque Regression Could Predict Future Cardiovascular Events in ACS Patients With Intensive Statin Therapy.
Circ J 2012; 76: 825-832

ピタバスタチンとアトルバスタチンを用いての、急性冠症候群における動脈硬化粥腫への退縮効果を検証した一連のJAPAN-ACS研究の延長版です。積極的にLDLコレステロールを低下させることによる予後改善効果が、粥腫の退縮とともに血管自身のnegative remodeling効果が大切であることを示した論文です。予後まで追跡した貴重な多施設共同研究です。doi


2.Yu M, Ishibashi-Ueda H, Ohta-Ogo K, Gabbiani G, Yamagishi M, Hayashi K, Hirota S, Bochaton-Piallat ML, Hao H.
Transient expression of cellular retinol-binding protein-1 during cardiac repair after myocardial infarction.
Pathol Int. 2012 Apr;62(4):246-53.  doi

虚血性心疾患におけます、心室のリモデリング現象は、心不全発症などの予後を規定する重要な因子といえます。この研究では、実験的心筋梗塞モデルにおけますレチノ酸のリモデリング発生における意義を検討したものです。その結果、梗塞モデルにおいては、レチノ酸結合タンパクの発現増加が認められ、レチノ酸の結合増加を惹起していることが推定されました。ヒト心筋梗塞でも同様の所見も認めています。新たな薬剤ターゲットとして注目されるところです。


3. Hibi K, Kimura T, Kimura K, Morimoto T, Hiro T, Miyauchi K, Nakagawa Y, Yamagishi M, Ozaki Y, Saito S, Yamaguchi T, Daida H, Matsuzaki M; JAPAN-ACS Investigators.
Clinically evident polyvascular disease and regression of coronary atherosclerosis after intensive statin therapy in patients with acute coronary syndrome: serial intravascular ultrasound from the Japanese assessment of pitavastatin and atorvastatin in acute coronary syndrome (JAPAN-ACS) trial.
Atherosclerosis. 2011 Dec;219(2):743-9. Epub 2011 Aug 22. doi

JAPAN-ACS研究のサブ解析です。急性冠症候群に対しての積極的な脂質低下量が冠動脈粥腫の退縮をきたし、予後改善効果にも貢献することが予想されています。その中で、末梢血管障害などを有する、多血管障害症例では、かかる積極的療法をより強化する必要があることを示した論文です。


金沢大学臓器機能制御学教室では、オリジナリティーの高い多施設共同研究を今後も積極的に推進して参ります。

医師国家試験、「学びの部屋」合格率100%達成!!

2012.03.29 | 教育 |

医師国家試験、臓器機能制御学教室特設「学びの部屋」合格率100%達成!!

当教室では、教育重視の一環として、南向き研究室の一室を開放し、学生諸君に自由に使ってもらうシステムを5年前から始めています。今回、この学びの部屋で卒業試験から国家試験まで一貫して、勉学に取り組んだ6名の諸君が見事全員医師国家試験合格を果たしました。
教室の移転に伴い、「学びの部屋」の存続について議論があるところですが、「合格率100%」を記録したシステムを無くする理由は無く、存続の方向で検討しています。

「学びの部屋」前で、国家試験合格の喜びを分かち合う学生諸君

この部屋は施錠することなく、学生諸君が自主運営してきた学習の場です。医局が移転した後も同様の形態での存続を考えています。

第76回日本循環器学会学術集会

2012.03.21 | 国内学会 | 学会・研究会 |

2012年3月16日(金曜日)から18日(日曜日)の3日間、福岡市で第76回日本循環器学会学術集会(鄭忠和会長)が開催されました。

 

幸い、天候にも恵まれ、18000名近い参加を得て、大変な盛り上がりをみせていました。

私たちのグループからもプレナリーセッション、シンポジウム、一般演題が数多く発表されました。

学術集会の花形でもありますプレナリーセッションでは高畠周先生(臓器機能制御学大学院生)がここ数年取り組んできました、新しい概念に基づく冠動脈ステント開発に関する話題を発表しました。質疑も大変活発でしたが、自身で取り組んできた課題だけに、納得の発表でした。発表後には座長の浅原孝之先生、福田恵一先生と問題点などを個別に意見交換しました。

発表を前に緊張する高畠先生(左)寝食を忘れて取り組んできた話題を堂々と発表する高畠先生(右)
China-Japna Caseカンファレンスで座長を務めた山岸教授。左は中国循環器学会のDayi Hu教授。
得意のQT延長症候群の話題を提供した林研至先生

いくつかあるシンポジウムにおきまして、今回は鄭会長の肝いりで開催されました、「アジアと連携」してのアジア心臓超音波ドプラ会議やChina-Japan Caseカンファレンスが印象的でした。特に後者では林研至先生(循環器内科助教)が得意のQT延長症候群に関する話題を発表しました。

また、井野秀一教授(付属病院臨床研究管理センター)が指名されました臨床研究の在り方に関するシンポジウムは、超満員の盛況で、廊下まで聴講者が溢れていました。井野先生のこの分野での人気と、臨床研究の今後の在り方についての重要性を窺わせました。

井野先生の発表を撮影しようと会場を訪れましたが、中に入れず、こんな写真しか撮れませんでした。
廊下まで溢れんばかりの人気でサブモニターでも多くの聴衆が聞き入っていました。

最近何かと話題の坪川俊成先生(循環器内科助教)はバイオマーカーに関するセッションで、血管内皮前駆細胞(EPC)の意義について堂々と発表しました。どこからか駆けつけた女性を中心とした応援団にも見守られ、他のセッションとは少し趣が違っていたようです。

EPC関連の発表を行った坪川先生。多くのファンが駆けつけていました。

今回の学会期間中、アメリカ心臓学会機関誌(Journal of the American College of Cardiology, JACC)の編集長DeMaria先生と山岸教授とで、最近日本から採択、掲載ました研究発表について、著者を交えての討論の場が設けられました。私達のグループからも最近このJACC(インパクトファクター14以上)に画像を中心としていくつかの論文(Tada H et al 2011, Tada H et al 2012 in press, Yamamoto T et al 2012 in press)が掲載されており、大変意義深い討論会となりました。尚、この記事の詳細は近く公表予定です。

左がDeMaria教授、右が山岸教授、中央のお二人が著者であります久留米大学循環器内科の先生方

以前にもお知らせしていますように、今回の学会では循環器内科教室以外の関連病院からもすぐれた発表が数多くなされていました。このような関連病院からの発表の増加は北陸全体のレベルの向上と連動しているようで、これかも引き続き学会学術活動にも取り組んでいきたいものです。

得意の脂質異常症の話題をかたる、循環器内科のチームリーダー川尻剛照講師。
何故かポスターが半分しかない、金沢循環器病院副院長の堀田祐紀先生。笑顔が最高ですね。
現集中治療部に勤務しています、藤田 崇志先生は2つの演題を巧みにこなしていました。
福井県立病院の余川順一郎先生は、新しいレ二ン阻害薬の心不全への応用を発表、多くの質問を浴びていました。
石川県立中央病院の寺本了太先生は、ASD術後での不整脈対策の話題でした。
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循環器内科の若手のエース山本隆介先生は左主幹部が関係して発症する急性冠症候群に対するPCIの成績を多施設研究として発表しました。

 

富山赤十字病院、藤田主税先生のポスターでは発表者を見かけませんでした。残念。

折角発表頂きながら、都合で写真などご紹介できなかった先生にはお詫びいたします。来年は水野杏一教授(日本医科大学)会長の下、横浜で開催予定です。また、盛り上がってお会いしましょう。