抜けるような青空と、ちょっと汗ばむ陽気でまさにカルフォルニアらしい天気の下、アメリカ合衆国心臓協会年次学術集会参加のため、ロスアンゼルスに滞在してきました。
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AHA 2008 in New Orleans, Louisiana
今回は、アジアからの参加を意識してか、アメリカ西海岸のロスアンゼルスでの開催となったようです。かなり以前、同じカルフォルニア州アナハイムではよくこの学会が行われてはいたのですが、しばらくは中西部、東海岸での開催が多く、日本からの参加者は長い飛行機旅に苦痛を強いられてきました。しかし今回は、西海岸ですとひと眠り到着しますので、快適な学会となりました。
会場は、ダウンタウンの南に位置します、Los Angeles Convention Centerで、NBAの強豪Lakersのホームスタジアムが隣接しています。学会の合間、終了後に観戦に出かけた方も多かったのではないでしょうか。
今回のAHAでは私たちの教室、仲間から約10題の演題発表がありました。この中で意義が比較的高い演題に与えられます口述発表が4題含まれていましたのは、ちょっと自慢できることでないかと思っています。まず、一番手は国際学会初舞台がAHAでの口述発表となった藤田崇志先生です。HCMの予後を全国での多施設共同研究として発表したもので、肥大心における遺伝子解析の重要性を再認識する発表となりました。
藤田崇志先生の発表アナウンスと実際の発表。座長の質問は大変聞き取りやすく、藤田先生も大満足の発表となりました。
続いては、お馴染みの林 研至先生で、心房細動におけるイオンチャンネル異常の話題を提供し、今後も増え行く心房細動の発生メカニズムに迫る講演となりました。
今回AHAの話題の一つが、コレステロール代謝におけます、PCSK9の役割についての研究の進展でしょう。抗PCSK9抗体によるコレステロール低下療法の成果が発表されたこともあり、この分野での話題が沸騰していました。川尻剛照講師は、以前から手掛けていました、PCSK9遺伝子異常に基づく家族性高コレステロール血症の話題を講演しました。この分子異常をモデルとしての今後のコレステロール低下療法への期待が高まっています。
川尻剛照先生はPCSK9関連の発表で、多数の質問を受けてました。
口述の最後を飾ったのは、大学院生の高畠 周先生です。あたらしいステントの開発に情熱をかたむける高畠先生は日本循環器学会シンポジウム、アメリカ心臓学会(ACC)に次いで、AHAでも口述発表となりました。
ポスター発表で比較的リラックスして参加していました宝達明彦先生は、突然大勢の外国研究者、日本人研究者の質問を受けましたが、さすがに上手に受け答えしていたようです。
突然乱入した内外の研究者たちの質問にも動じない宝達明彦先生。
今回の目玉は何と言っても関連病院であります、珠洲市総合病院勤務の寺本了太先生による、PCI時の末梢血管保護に関する話題です。地域医療に貢献しながら、AHAの場で発表することは、これからの若い先生方にとりましてこの上ない力となると思います。
AHAのような国際学会への参加は発表、討論は勿論ですが、旧友や普段会話を交わすことが少ない、日本人研究者同士の交流です。山岸教授の旧友でもあり、今なお、活躍中のAnthony N DeMaria先生(現JACC編集長)やSteven Nissen先生(現クリーブランドクリニック心臓内科主任)などとの再会はいつも楽しいものであると聞いています。
(左)旧知のDeMaria氏と語らう山岸教授。(右)普段あまり会話の無い仲間でも、自然といい雰囲気となるのが不思議です。それにしても、右の二人の服装からして関係が推定されます。
本学会中にアメリカ大統領選挙がありました。当初は直前まで49%対49%で大変な接戦が予想されていましたし、大票田であるオハイオ州、フロリダ州そしてバージニア州のうち2つを制することが勝利の条件のようになっていました。特にオハイオ州に関しては、直前のテレビニュースでも「オハイオ」「Ohio」そして「お早う(本当にそう聞こえました)」とキャスターが連呼していたのが今でも耳に残っています。この間の国民の熱狂ぶりを直接目の当たりにすることが出来ただけでも、学会参加の意義がありました。しかし、欧米そして日本も抱える経済問題の解決の糸口が見えない中で、「Change」に続く「Forward」を掲げたオバマ氏の再選が、翌日の大幅な株価下落として反応したのは大変興味深いところです。