下記要綱で心疾患に対する抗血栓療法に関する講演会を開催致します。
皆様、奮ってご参加ください。
2017.05.21 | 学会・研究会 |
2017.05.18 | 国内学会 | 学会・研究会 |
第90回日本内分泌学会学術総会が京都市で開催され、当教室から多数の発表がありました。金沢大学の医学生による発表があり活気に満ちたものになりました。
学生の皆さんは堂々と発表され、最新の知に触れ、集合写真でみられるように皆さんいい表情になっています。
シンポジウム
武田仁勇
[SY6-1] 食塩感受性高血圧におけるアンジオテンシノーゲン遺伝子のエピジェネティクス
若手臨床内分泌医育成委員会企画
Clinical Endocrinology KO round
米谷充弘
[YTC1-6] 繰り返す低血糖発作を契機に診断されたDoege-Potter症候群の1例
※この発表にてRunners-Upを受賞しました。
青野大輔
[YTC1-1] 無痛性甲状腺炎による甲状腺中毒症とJ波症候群を伴った心肺停止の1例
※この発表にてプレゼン賞を受賞しました。
口演
米谷充弘
[O1-10-12] 副腎性クッシング症候群における体細胞変異とDNAメチル化の関連に関する検討
ポスター
武田仁勇
[P1-29-5] 原発性アルドステロン症患者における副腎静脈サンプリング時のACTH負荷の有用性―Japan Primary Aldosteronism Study (JPAS)における検討―
小西正剛
[P1-30-5] サブクリニカルクッシング症候群及びクッシング症候群における循環器動態の差異
武田仁裕
[P1-25-5] 糖尿病ラットの末梢神経におけるミネラルコルチコイド受容体の役割
[P2-26-3] 原発性アルドステロン症の臨床像に及ぼす加齢の影響
塩村美帆
[P2-12-3] 甲状腺中毒症が遷延し診断に難渋したアンカロン誘発性甲状腺中毒症2型の1例
中山陵
[P1-6-5] 経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術後に臨床徴候を示したIGF-1低値の先端巨大症の1例
以下、クリニカルクラークシップの一環で学会に参加した6年生の感想です。
中山稜さん(金沢大学医学類6年)
今回はクリニカルクラークシップの一環として、第90回日本内分泌学会学術総会に参加させていただきました。武田先生をはじめ、米田先生、米谷先生といった多くの先生方にご指導いただいたおかげで、至らぬ点は多々ありましたが満足のいく発表ができたと思います。
今回が自分にとって初の学会発表ということで、最初は発表形式の種類も、ポスターの作り方も何一つわからない状態からのスタートでした。画像の提示の仕方、経過図の作り方、現病歴のまとめ方など課題は多く、本当に大変な準備期間でした。発表時間は3分と短いですが、その3分で自分が伝えたいメッセージをわかりやすく伝えることの難しさを痛感しました。また、ポスターの形式も、構成やデータの表し方など発表者ごとに様々で今後の参考になりました。
今回の症例1つをとっても、議論するほど新しい発見があり、普段実習で経験する症例1つ1つをもっと大事にする必要があると感じています。自分が担当した患者さんのことで知らないことは何もないと胸を張れるように取り組んでいきたいです。大変貴重な機会を与えていただいた第二内科の先生方、本当にありがとうございました。
塩村美帆さん(金沢大学医学類6年)
元々内分泌学は興味のある分野で、今回御縁があり第90回日本内分泌学会学術総会で発表するという機会をいただきました。準備の過程では多くの先生方にご指導いただき、症例だけでなくプレゼンテーションの仕方やポスター発表の様式を学ぶことができました。発表本番が近づくにつれてしっかりと発表できるのか不安になりましたが、本番は落ち着いて発表することができました。ただ、質問にはうまく答えることができず、症例に関して深い理解が必要なことを痛感しました。
学会中に他の先生方の発表を聞き、プレゼンテーションの違いに驚きました。次の機会があればもっとうまく発表したいと思います。今回参加させていただき、多くのことを学べて本当に良かったです。ありがとうございました。
森田まゆみさん(金沢大学医学類6年)
私は今回初めて全日本クラスの大きな学会に参加させていただき、とても刺激的な経験となりました。初めは先生から、学会発表してみようよ、と軽い誘いをいただき、私も軽い気持ちでした。しかし実際は、たった3分のポスター発表にたくさんの知識と時間が必要で、スライド作りに没頭しなければなりませんでした。事情により発表できませんでしたが、ノックアウトラウンドという新しい企画のスライド作りに携わることができ、2週間でしたがとても充実した時間を過ごすことができました。この2週間でポスター発表のスライドの作り方や、今まで知らなかった疾患についてなど、多くのことを学ぶことができました。また内分泌疾患の面白さも感じることができました。この経験は将来の糧になったと思います。このような経験ができたのも米谷先生をはじめ多くの先生方のおかげです。本当にありがとうございました。
医学は日進月歩で進んでおり、その進歩と革新に取り残されないように、我々も金沢の地より最新の知見を発信せねばなりません。学会参加を通じて日々臨床、日々研究に勤しむよう思いを新たにしました。
武田仁裕
2017.05.15 | Publications |
芳珠記念病院の森清男先生がInternal Medicine誌のAward for Best Citationを受賞されました!
これは同誌に掲載された論文のうち、被引用回数が最も多い論文に対して表彰される名誉ある賞です。IgG4関連疾患と心膜病変についての症例報告です。
Pericardial Involvement in IgG4-related Disease.
Mori K, Yamada K, Konno T, Inoue D, Uno Y, Watanabe M, Okuda M, Oe K, Kawano M, Yamagishi M.
Intern Med. 2015;54(10):1231-5.
日本内科学会の会員総数11万人の内、これまでに森先生を含めわずか2名しか受賞したことのない極めて栄誉ある賞です。また、数ある総説や原著論文の中からこのような症例報告が引用数においてトップとなることは如何に貴重かつ示唆的な報告であったかということが窺い知れます。
今回の受賞は当教室における循環器内科、リウマチ膠原病内科、内分泌代謝内科での横断的な症例検討の成果と言えます。1つの症例をとことん掘り下げ、論文を通じて臨床にフィードバックする森先生の変わらぬ情熱と姿勢はまさに総合力ある内科専門医を目指す私たちの目指すべき姿です。
2017.05.12 | 医局行事 |
2017年4月22日にANAクラウンプラザホテルにて2017年度の新入局員および病棟の新人看護師を歓迎する花見の宴が開催されました。
金沢大学に所属する医局員、各関連病院の要職の先生方が参集されました。
当教室山岸教授からの挨拶、名誉教授の馬渕先生の乾杯で会がスタートし、新人の皆さんを囲んで和やかに会は進行しました。病棟の看護師さんたちもたくさん参加して頂き、華やかな会となりました。今年は総勢118名と例年より参加人数が多く、会場は大変盛り上がっていました。
その後、新たに入局された12人の先生方から挨拶と抱負がありました。挨拶された先生方を紹介します。
吉田 美咲先生
滋賀医科大学 平成27年卒
金沢大学附属病院勤務
大森 亜衣先生
日本大学 平成24年卒
浅ノ川総合病院
松永 和大先生
東京慈恵会医科大学 平成14年卒
石川県中央病院
竹田 康人先生
東京医科大学 平成21年卒
福井県立病院
川崎 梓先生
自治医科大学 平成21年卒
珠洲市総合病院
太田 亮介先生
川崎医科大学 平成23年卒
金沢大学附属病院
自治医科大学 平成24年卒
石川県立中央病院
金沢医科大学 平成27年卒
石川県立中央病院
恒例の記念写真
最後は浅ノ川総合病院病院長の荒木先生に締めて頂きました。新たな仲間とともに今年も教室一丸となって臨床、研究、教育に邁進する決意を新たにした素晴らしい春の宴となりました。
2017.05.09 | 研究 |
これまで多くの医局員が海外留学への道を開き、成果を挙げています。
野村章洋:Massachusetts General Hospital, Center for Human Genetic Research(ハーバード大学)
2015年1月、アメリカのオバマ大統領が“Precision Medicine”の推進を宣言しました。これは”Personalized Medicine (個別化医療)”とも重なる部分がありますが、「個人のゲノム、生活環境、ライフスタイルなどの情報を100万人規模で集め、その情報から得られる個々人の“違い”をもとに、ある治療が最も奏功し副作用が最小限となるようなグループを明らかにすること、そしてその結果を実臨床に応用すること」に重きをおいています。ゲノム医療分野であれば、個々人の違いとは「ある遺伝子内の変異の有無」や、「あるゲノム位置における特定のアレルの有無/ジェノタイプの違い」です。10年前までは疾患に関連のあると予想される特定のゲノム領域に限定した研究が中心でした。しかし、ここ数年の次世代シーケンサーと呼ばれる超高速ゲノム解析装置を用いたゲノム解析技術の飛躍的な進歩に伴い、個人の全エクソームあるいは全ゲノム配列を網羅的に、比較的安価で、かつ短時間に解析することが可能となりました。これにより、世界中で数十万人にものぼる個人ゲノム配列が今日まで解析された結果、Precision Medicineを本格的に目指す体制が整った、という意味での今回の宣言と考えられます。
現在私が留学しているKathiresan labは、脂質異常症および心筋梗塞の原因となり得るゲノム領域を次世代シーケンサーにて網羅的に同定し、その機能解析を行い、最終的に臨床応用を目指すという、まさにPrecision Medicineを地で行くような研究室です。私は次世代シーケンサーで解析された数十万人分のゲノムデータをもとに、脂質異常症および心筋梗塞の原因となるゲノム領域、特に治療や薬剤のターゲットとなり得る領域を、コンピュータを用いて同定する「バイオインフォマティクス(遺伝情報学)」部門に所属し、原因ゲノム領域の同定とその臨床的意義について研究を行っています。500万行×3万列、10テラバイトにのぼる大量のゲノム変異テキストデータの中から目的とする結果を得るのは容易ではありませんが、もともと小学生の頃からコンピュータプログラミングで遊んでいたという適性もあり、医学、生物学、数学、統計学、計算機科学を合わせたようなこのバイオインフォマティクスに魅力を感じ、また楽しみながら行っています。渡米して1年、残念ながらまだ目立った研究結果を公表するには至っていませんが、心筋梗塞・脂質異常症におけるPrecision Medicineの推進に貢献できるような研究をこれからも続ける所存です。
なお、私が現在このように留学ができているのは、前任者の多田隼人先生からの多大なるアドバイスと研究室への根回し (!) のおかげであり、留学当初よりスムーズに研究を始めることができました。また留学を推薦していただきました山岸正和教授、そして留学中の奨学金をいただいております公益財団法人吉田育英会様に、この場を借りて御礼申し上げます。
多田隼人:Massachusetts General Hospital, Center for Human Genetic Research(ハーバード大学)
山岸教授をはじめ、諸先生方のご支援の元、日本循環器学会より留学支援助成金を頂き、平成24年4月より平成26年3月までの計2年間、上記にて留学させていただきました。マサチューセッツ州ボストンは言うまでもありませんが、非常に多くの研究機関が集積し、研究留学の地としては非常に恵まれた環境にありました。所属研究室はSekar Kathiresan氏をPIとして、ゲノムワイド関連解析(GWAS)や次世代シークエンシング解析などの手法を用いて脂質や心血管疾患との関連を遺伝統計学の手法を用いて解析するといった研究がメインで行われており、白分もこのような知識や経験も全くない状況でゼロからのスタートでしたが関与させていただきました。まずは大規模なデータを効率よく扱うべく、いわゆるコンピュータ言語を用いた「スクリプト」と呼ばれるプログラムを扱う手法を学び、これらを用いていわゆるGWASやより頻度の低い変異を対象としたエクソームアレイないしはエクソームシークエンシングによるデータの解析にあたってきました。基礎実験とは異なり、一日中コンピュータの画面と向き合い、サーバーの中での仕事というこれまでとは全く異なる環境での仕事で最初は戸惑いもありましたが、同僚の助けもありいくつかのプロジェクトにおいて解析をほぼ完結するに至りました。結果についてはそれぞれ英文誌に現在投稿中であり採択を心待ちにしているところです。
また、生活面では、高緯度にある影響から夏は日が長く、ボストン周辺では様々なイベントがあります。また、逆に冬は日が短く気温も低いので暗い気持ちになることもありますが、元々北陸で生まれ育った自分としては、大きな問題ではありませんでした。また、妻と2人の子供(それぞれl歳、4歳)を連れていきましたが、特に4歳時に渡米し現地の公立幼稚園に2年間通った息子については、渡米後半年を経過した時点でこれまで10年以上に渡り英語教育を受け、努力をしてきた父親である私を、英会話能力において軽く追い抜くといううれしいような悲しいような現実を目の当たりにし大変な驚きを感じました。また、学校では性別や人種を超え友人ができ、楽しく過ごしている様子を見ることができ、自分も同様に他分野の外国人を含む研究者とつながりを持つことができたことも留学の成果の一つだと感じています。
留学をするにあたり、様々な経験をさせていただきましたが、今後の第二内科における研究の発展に貢献・還元できればと考えております。
中條大輔:Baylor Institute for Immunology Research(ベイラー大学)
テキサス州ダラスにやってきて早くも3年以上が経ちました。2011年の夏は最高気温45℃を記録したのを始め、40日間連続で3 digits(華氏100度以上=38℃以上)を達成するなど記録的猛暑が続いています。ベイラーは日本の皆様には馴染みが薄いかもしれませんが、テキサス州ダラス・フォートワースエリアを拠点とする巨大メディカルコンプレックスで、総合病院とクリニックを合わせると100以上の施設があると聞いています。私は、そのうちダラスキャンパスに属する免疫学研究所で、膵島移植の権威である松本慎一先生とヒト免疫学の権威であるDr. Jacques Banchereauのもと、1型糖尿病と膵島移植についての研究をしています。
膵島移植は、生命を脅かす重症高血糖および低血糖発作を繰り返すような不安定1型糖尿病の患者さんをインスリン自己注射から解放することが可能な画期的治療法です。事実、ベイラーでも独自のプロトコールを用いた症例は、ほぼ全例インスリン離脱を達成しています。ただし、対象疾患の1型糖尿病が自己免疫疾患であるがゆえに、移植した膵島が再び自己免疫による攻撃を受けることで破壊され、良好な長期成績が得られにくいということが推測されています。そこで、自分の役割としては、①移植後の膵島機能とともに自己免疫反応をモニターすること、②1型糖尿病患者の自己免疫性(抗原特異性)T細胞の反応を詳細に検討すること、が挙がり徐々に結果が出つつあります。将来的には、“血糖値をコントロールする”という病気の結果に対しての治療のみならず、膵島移植に加えて“免疫反応を制御することで膵島の破壊を食い止める”といった原因に対する治療が出来れば、1型糖尿病の根治も夢ではないと感じています。このような先進医療を北陸の患者さんにも提供することが出来るよう、研究に邁進したいと思います。
このような研究は試行錯誤の連続で苦労も耐えませんが、その中で留学中ならではの楽しみを味わうことも大切です。身近なところでは、研究者仲間とのパーティやスポーツ観戦、週末を利用したドライブ旅行などでしょうか。ダラスには昨季ワールドシリーズに進出したメジャーリーグのテキサスレンジャース、今季NBAチャンピオンになったダラスマーべリクス、NFLの古豪ダラスカウボーイズとプロスポーツの強豪チームが揃っています。中でも、レンジャースには上原・建山両投手も在籍し、同じ地区内にはマリナーズのイチロー選手、アスレチックスの松井選手などもいて、安いチケットでこれらの対戦が見られるのは有り難いです。
テキサス州内のサンアントニオやオースティンなどは1泊あれば車で行けますし、夏休みが取れれば、壮大な?旅行プランを立てて、アメリカの大自然を巡るのも可能です。実際私たちも、ダラスからグランドキャニオンを最終目的地に設定し、戻ってくるという総行程5,300kmのドライブ旅行をしたこともあります。中でも、ニューメキシコ州のホワイトサンズ国定公園は、この世のものとは思えない風景で感動しました。アメリカ国内の学会も時差ボケなしで参加でき、大物研究者を紹介してもらったり、発表以外の時間にも会話が持てたりと、日本にいた時とは違う経験もできました。学会で金沢大学から参加された先生方と再会し、近況を話したり食事をしたりするのも毎回の楽しみでした。また、近隣のテキサス大学と合わせると周囲に日本人研究者も多く、多くの人と仕事の面でもプライベートな面でもつながりが出来た事も大きな財産です。留学先での絆というのは非常に深く、帰国後も良い関係を続けていきたいとつくづく思います。
最後になりましたが、このような長期に亘る留学の機会を与えてくださった山岸正和教授をはじめとする金沢大学臓器機能制御学の先生方に深く感謝を申し上げます。
伊藤清亮:ジュネーブ大学 出井研究室
2010年6月よりスイスのジュネーブ大学にて研究生活を送っています。ジュネーブ市はスイスの最西端に位置し、三方をフランスに囲まれています。ジュネーブ州は人口40万人で、町には高層ビルもなくレマン湖畔の田舎町で、自分にとって住み良い町です。
ジュネーブ大学は16世紀にカルヴァンにより創設された大学です。私が所属するのはpathology and immunologyの出井研究室です。ボスの出井先生は、クリオグロブリン腎症モデルマウス、マウス抗赤血球抗体、内在性レトロウイルスなどの研究に携わってこられています。研究に対する姿勢を始め、多くのことを学ばせていただいています。ラボには、順天堂大学の先生が一人、ポスドクが一人いらっしゃいます。またテクニシャンが2人いらっしゃり、効率的に実験を進めていく体制があります。リサーチカンファレンスと抄読会がそれぞれ週1回あります。
研究内容は、前任の山田和徳先生がされていた仕事を引き継ぎ、1つはヒトのクリオグロブリンを使ったモデルマウスの樹立を目指しています。もう1つはマウスIgG1クラスに属するマウス抗赤血球抗体の解析をしています。
異国生活は、いかに日本が便利かを思い知らされました。コンビニもなく、牛丼屋もないので、頑張って自炊をしています。研究はもちろん大事ですが、体調管理とこちらの生活を楽しむことが、研究にも良い影響を与えていると思います。空いている時間は、語学、ヨーロッパ旅行、読書をしています。留学して良かったと思うことは、何よりもどっぷりと研究生活に浸り、研究の魅力を味わえていることです。多くのことを吸収し、日本に持ち帰れるよう、日々過ごしていくつもりです。最後になりましたが、貴重な留学の機会をいただいた山岸正和教授、川野充弘科長、山田和徳先生を始めまして、これまでお世話になった先生方、コメディカルの方、後輩、友人、家族に感謝申し上げ、留学記を終わります。(2011年8月記)
坂田憲治:スタンフォード大学 循環器内科学教室
平成20年8月より平成23年12月まで米国スタンフォード大学循環器内科学教室に留学いたしました。私が所属していたセンターは、もともとPaul G. Yock, Peter J. Fitzgeraldの両教授がUCSFからスタンフォードにダブルヘッドハンティングされてきた時に創立されたもので、機械式IVUSの父であるYock教授とその右腕であったFitzgerald教授をセンター長に有していたことから、IVUS関連のプロジェクトが多く、多施設臨床試験のコアラボ解析を重要な仕事の1つとしております。私は、そこで担当した多施設臨床試験を通して定量、定性的IVUS解析の基礎を学びました。研究に関しては、新しい薬剤溶出性ステントの成績報告のみならず、IVUSによる各種ステントの血管反応様式、再狭窄や遅発性ステント血栓症のメカニズムの解明、さらには移植心冠動脈病変の評価や光干渉断層法(OCT)や心臓MRIを用いた臨床試験の解析などを大きなテーマとしていました。また、各フェローはカテ室のIVUS On-Callの曜日がそれぞれ決まっていましたが、カテ室からの要請に応じてIVUSを読影し、オペレーターとインターベンション治療における治療戦略に関してディスカッションを行います。この様に常に臨床現場と接することで、他のラボとは違う実臨床に還元できる独創的な臨床研究を行っているのが特色です。米国留学期間に臨床研究に十分な時間を費やすことが出来たことで、「実臨床において自分たちが日々行なっていることが本当に正しいかどうかを検証しながら前に進むこと」の大切さと、その方法論の基礎を学ぶことが出来たと思います。
渡米して良かったことは、いろいろな意味で視野が広がったことだと思います。まず米国という国については、そこで実際に暮らし、仕事をしてみると、日本で想像していた通りのこともあれば、明らかに誤っていたこともあります。逆に、当然と思っていた日本での認識や慣習が、国際社会の中では特殊であったということも多々あります。すわなち、外からの視点を持てることで、米国人には見えない米国が見えているでしょうし、国内では見えていなかった日本の側面も少しは理解できたのではないかと思います。さらには、言語も考え方も全く異なる世界に身を置くことで、いやが応でも自分自身を見つめ直すことになるわけですが、これも当たり前の日常の中では得にくい貴重な体験であったと思います。
帰国後感じたことは、日本の病院で再び働いた時に経験した、いわゆる「逆カルチャーショック」かもしれません。初対面の目の前の人が何語を話すかさえもわからない米国と比べると、ある意昧均一な日本の職場環境はとても安心感を覚えましたが、同時に、集団の中で意見や個性をうまく表現する難しさを改めて感じました。
米国は資本主義というルールを基に、多種多様な人種、言語、文化、価値観が共存、住み分けをしている社会であり、ある意味、日本も含めた世界の縮図であるように思います。日本で仕事をしていた時には、自国や日本人である自分を強く意識することはありませんでした。この意味で、米国での研究や生活は、国際社会の中の日本、自分を知る第一歩であったと思います。米国での経験から、日本の臨床、臨床研究、教育、医療制度などを強く意識しながら仕事をするようになりました。米国のシステムの全てが必ずしも優れているわけではなく、日米それぞれの実情に応じた長所短所があるように思いますが、両国の長所を生かせるよう将来の日本の循環器臨床研究の発展に微力でも貢献できればと考えております。
濱野良子:米国国立癌研究所
平成20年10月より米国国立癌研究所フレデリック支所(National Cancer Institute‐Frederick)に留学しております。若手研究者インターナショナルプログラムの一環としてこちらで勉強をさせていただく機会を得られました。
NCIはNIH(National Institute of Health:米国国立衛生研究所)の研究所のひとつです。メインキャンパスはベセスダにありますが、フレデリックでは主に基礎研究がおこなわれています。ベセスダと同様メリーランド州にあり車で40分ほど北に位置しています。大きな町ではありませんが、自然が豊かできれいなところです。研究所がアメリカ陸軍の基地内にあるという特殊な環境ですが、セキュリティが厳しいためとても安全です。
私が所属しているDr. Joost J. Oppenheimのラボはサイトカインやケモカイン、制御性T細胞をターゲットに、癌だけではなく広く免疫を研究しています。同時にCancer and Inflammation Program(CIP)という大きなプログラムにも属しており、研究室を越えての共同研究も頻繁に行われています。ラボミーティングとCIPミーティング、それに国内外の著名人によるレクチャーがそれぞれ週1回ずつ行われていますが、議論も盛り上がり刺激的です。炎症・免疫を研究するのに最高の環境と思います。
私自身は制御性T細胞の研究に参加しています。マウスCD4T細胞を培養し、制御性T細胞へ分化・増殖させそのメカニズムについて研究しています。最初は英語が聞き取れなかったり、初めての実験がうまくいかなかったり戸惑ってばかりでしたが、同僚や先輩が親切にわかるまで教えて下さるので、少しずつ面白くなってきました。
週末の楽しみとしては、FrederickはWashington DCからも車で1時間と近いため、スミソニアン博物館や美術館などを訪れることもできます。また隣のバージニア州のワイナリーやブルーベリーなどの果樹園を訪れることもできるようです。リンカーンの演説で有名なゲティスバーグにも近く、アメリカの歴史と生活を味わうこともできそうです。このような得難い経験をする機会を与えて頂いた山岸教授をはじめとする臓器機能制御学の諸先生方、金沢大学癌研究所分子生体応答研究分野 向田教授に心から感謝申し上げます。今後とも御指導・御鞭撻のほど宜しくお願いいたします。
2019/09/26
循環器内科ホームページ移転のお知らせ
2019/01/20
生活習慣と脳卒中の関係性
2019/01/07
2018年度忘年会
2018/11/19
AHA 2018 in Chicago, Illinois
2018/11/02
日本循環器学会東海北陸合同地方会
2018/10/19
第12回金沢医学館記念医学賞
2018/09/14
高安賞
2018/09/01
3年連続の快挙!
2018/08/20
第62回日本リウマチ学会
2018/07/24
第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会
2018/07/11
第136回日本循環器学会北陸地方会
2018/07/09
夏のバーベキュー 2018(循環器グループ)
2018/06/30
初期研修医内科専門コース
2018/06/26
第2内科同窓会
2018/06/20
第61回日本腎臓病学会学術集会
2018/06/04
金沢大学名誉教授授与
2018/05/24
急性心筋梗塞に関する話題
2018/05/09
痛風に関する話題
2018/04/25
2018年度 花見の宴
2018/04/09
新年度スタート