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HFNC・ASV実体験

2017.07.22 | 教育 | 臨床 |

経鼻高流量酸素投与(HFNC:High Flow Nasal Canula)は集中治療分野におけるこの10年の大きなブレイクスルーです。

High-flow oxygen therapy and other inhaled therapies in intensive care units.
Levy SD, Alladina JW, Hibbert KA, Harris RS, Bajwa EK, Hess DR.
Lancet. 2016 Apr 30;387(10030):1867-78. Review. doi link-icon

HFNCが特に有用なのは、低酸素かつ低CO2血症の呼吸不全で、また抜管後管理にも有用とされていますが、本邦での普及は十分ではありません。循環器グループの吉田昌平助教を中心に若手医師達がHFNCを学ぶ体験会を行いました。

 

SAS、心不全治療のデバイスとして注目を集めるASVの最新機種についても学びました。学生さんも参加し、マスク式人工呼吸器を実体験してもらいました。

今後もこのような臨床に即した勉強会を開催していきます。

【原著論文】ブタモデルにおけるNoboriステント留置後超急性期の内皮化の検証(循環器グループ:森雅之特任助教)

2017.07.19 | Publications |

Early endothelialization associated with a biolimus A9 bioresorbable polymer stent in a porcine coronary model

Mori M, Sakata K, Nakanishi C, Nakahashi T, Kawashiri MA, Yoshioka K, Takuwa Y, Okada H, Yokawa JI, Shimojima M, Yoshimuta T, Yoshida S, Yamagishi M, Hayashi K.
Heart Vessels. 2017 May 17. doi
Impact Factor (2016): 3.434

 

Abstract

Although Nobori®, with a bioresorbable polymer and biolimus A900380 abluminal coating, has unique characteristics, few data exist regarding endothelialization early after implantation. Fifteen Nobori® and 14 control bare-metal stents (S-stent™) were implanted in 12 pigs. Histopathology of stented segments, inflammation, and intimal fibrin content was evaluated on the 2nd and 14th day after implantation. On the 2nd day, endothelial cells were morphologically and immunohistologically confirmed on the surface of both stents, although some inflammatory cells might be involved. Stent surface endothelialization evaluated with a scanning electron microscope showed partial cellular coverage in both stents. On the 14th day, neointimal thickness and percentage of the neointimal area were significantly lower in Nobori® than in S-stent™ (51.4 ± 4.5 vs. 76.4 ± 23.6 µm, p < 0.05 and 10.8 ± 2.6 vs. 14.1 ± 4.2%, p < 0.01). No significant differences were found in these parameters on the 2nd day (17.3 ± 14.9 vs. 26.7 ± 13.6 µm and 3.7 ± 3.0 vs. 6.7 ± 3.7%), in inflammatory and intimal fibrin content scores. These results demonstrate that endothelialization could occur early after Nobori® implantation with similar inflammatory reaction to bare-metal stents, probably contributing to low frequency of in-stent thrombosis and restenosis.

 

背景
狭心症・心筋梗塞の治療として経皮的冠動脈ステント留置術が広く行われるようになりデバイスも日々進歩しています。薬剤溶出性ステントの登場により、ステント内再狭窄はベアメタルステントと比較して10%以下に減少してきました。しかしながら、ステントに塗布されている薬剤・ポリマーによる炎症反応が遷延することで血管修復反応(内皮化)が遅延し、遠隔期にステント内血栓症を認めることが問題となっています。
薬剤溶出性ステントであるNoboriは、薬剤・ポリマーがステントの血管壁接着面のみにコーティングされており、全周性コーティングと比較して薬剤・ポリマーの量が少なく、ステント留置後比較的早期に内皮化が起こると言われています。動物実験でその検証が行われていますが、留置後超急性期に内皮化を検証した報告はほとんどありません。そこで、Nobori留置後超急性期の内皮化をブタモデルを用いて検証しました。

概要

図1
図1

Noboriとその原型となったベアメタルステント(S-stent)をブタ冠動脈に留置し、2日後と14日後における内皮化を比較検討しました。HE染色、蛍光免疫染色、走査型電子顕微鏡(SEM)で形態観察および組織学的解析を行ったところ、ステント留置2日後には、ステントは新生内膜で部分的に被覆されており、特にHE染色標本では形態学的に内皮化を示唆する血管内皮細胞が確認されました(図1)。そこで、内皮細胞の存在を確認するために蛍光免疫染色を行ったところ、von Willebrand factor、VE-Cadherin、KDR/VEGFR2においてそれぞれで陽性となり、内皮細胞の存在が証明されました。

図2
図2

さらに、ステント留置14日後には、ステントは新生内膜で完全に被覆されていました(図2)。組織学的解析では、NoboriはS-stentと比較して、14日後における新生内膜の増殖が有意に抑制されており、一方で炎症反応はNoboriで有意に高いことが分かりました。つまり、Noboriはベアメタルステントと同様に留置後早期に新生内膜の増殖が起こり、その増殖は薬剤により適切に抑制されていたと考えられます。

今後の展望
臨床的な応用としては、Noboriでは早期に内皮化が起こることが確認されたので、ステント留置後に必要な抗血小板薬2剤の内服期間を短縮できる可能性が示唆されます。また、超急性期のステント内血栓症の予防効果にアドバンテージがあると考えられます。これらの特性がアウトカムに反映されるかは更なる臨床試験が必要であり、今後、橋渡し研究として取り組んでいく予定です。

循環器BBQ 2017夏!

2017.07.16 | 医局行事 |

恒例となりました循環器グループのBBQが白山吉野オートキャンプ場で開かれました!

 

家族連れの参加者も多く、夏空に子どもたちの楽しそうな声が響いていました。ひと時の休息を挟んで、また忙しい臨床・研究・教育の日々が始まります!

 

第134回日本循環器学会北陸地方会(会長:金沢循環器病院 名村正伸)

2017.07.13 | 国内学会 | 学会・研究会 |

第134回日本循環器学会北陸地方会が下記の通り開催されました。生憎の雨天ながら200名を超える参加者を得て盛会となりました。

【第134回日本循環器学会北陸地方会】

会長 名村 正伸
(心臓血管センター金沢循環器病院 循環器内科)

開催日:2017年6月25日(日) 
会 場:金沢大学医学部十全講堂・教育棟
石川県金沢市宝町13-1 TEL 076-262-8151

教育セッション:「医療経済学から見た循環器領域」東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 医療経済学分野 教授 川渕 孝一 先生

ランチョンセミナー:「水利尿薬が心不全治療に与えたインパクトと今後の課題」富山大学大学院医学薬学研究部 内科学第二 教授 絹川 弘一郎 先生

ティータイムセミナー:「静脈血栓塞栓症(DVT&PTE)のターニングポイント!〜その診断と治療のコツ〜」岐阜大学大学院研究科 循環呼吸病態学 臨床教授 西垣 和彦 先生

 

 


当教室からの発表

 

若年で動脈塞栓イベントを2度発症した急性前壁中隔心筋梗塞の一例
金沢大学附属病院 循環器内科
邑井 洸太

 

網羅的遺伝子解析により診断した脳腱黄色腫症の一例
金沢大学附属病院 循環器内科
稲端 翔太 

 

心停止蘇生後に経時的な心機能低下を評価し得た一例
金沢大学附属病院 循環器内科
田村 祐大 

 

 

ムコ多糖症 I 型(Scheie症候群)を背景とした連合弁膜症に対して、二弁置換術を行った一例
金沢大学附属病院 循環器内科
柴山 純一 

 

原発性アルドステロン症の臨床像に及ぼす加齢の影響
金沢大学附属病院 内分泌代謝内科
武田 仁裕


関連病院からの発表

 

急性冠症候群における Polyvascular disease の局在が臨床的予後に与える影響
心臓血管センター金沢循環器病院 循環器内科
中橋 卓也

 

難治性冠攣縮性狭心症に対してステント留置が有効であった1例
福井県立病院 脳心臓血管センター 循環器内科
烏川 信雄

 

二次予防患者における当院でのPCSK9阻害薬の使用経験
福井県立病院 脳心臓血管センター 循環器内科
野路 善博

 

Double target法による鎖骨下~腋窩静脈穿刺を行った6例
石川県済生会金沢病院 循環器内科
大江 康太郎

 

右鎖骨下静脈慢性完全閉塞に対して IVUS-guide PTA を行った造影剤禁忌の透析症例
心臓血管センター 金沢循環器病院 循環器内科
堀田 祐紀

 

腸骨静脈圧排症候群による深部静脈血栓症に対してインターベンションを実施した一例
心臓血管センター 金沢循環器病院 循環器内科
役田 洋平

 

心不全で発症した大動脈炎症候群の一例
石川県立中央病院 循環器内科
多田 貴康

 

RS3PE 症候群に併発した肺アルペルギローマの治療中に突然死した亜急性心筋炎の一剖検例
加賀市医療センター
田川 庄督

 

経胸壁心臓超音波検査で、左房内血栓を認めた心房細動例の臨床象と転帰
富山赤十字病院 循環器内科
賀来 文治

 

左房前壁の低電位領域が基質であった心房粗細動の1例
石川県立中央病院 循環器内科
疋島 和樹

 

頻発性右冠尖由来心室性期外収縮の治療に難渋した1例
福井循環器病院 循環器内科
福井循環器病院 小児科
山口 善央

 

石灰化を伴う新生内膜によるステント内再狭窄病変に対する PCI 中に冠動脈閉塞をきたした一例
福井循環器病院
松井 吟

 

胸膜炎の治療後に巨大右室腫瘤を発見された一例
恵寿総合病院
東 雅也

 

左室の脂肪変性、冠動脈瘤、腹部大動脈瘤を合併した、SMAD 4遺伝子異常によるOsler-Weber-Rendu病の1例
富山赤十字病院 循環器内科
井ノ口 安紀

 

心エコー図検査で診断に苦慮した左室右心系シャントの1例
厚生連高岡病院 循環器内科
太田 宗徳

 

バルサルバ洞限局性大動脈解離による大動脈弁閉鎖不全で心不全を呈した2症例
心臓血管センター 金沢循環器病院 循環器内科
役田 洋平

 

 

【原著論文】一般人口における脂質コントロールの現状(循環器グループ:多田隼人助教)

2017.07.10 | Publications | 臨床 |

027Lipid Management in a Japanese Community: Attainment Rate of Target Set by the Japan Atherosclerosis Society Guidelines for the Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2012

Tada H, Kawashiri MA, Nohara A, Inazu A, Kobayashi J, Yasuda K, Mabuchi H, Yamagishi M, Hayashi K.
J Atheroscler Thromb. 2017 Mar 1;24(3):338-345. doi
Impact Factor (2016): 2.442


先の第81回日本循環器学会学術集会(2017年3月金沢)で採択された「金沢宣言:ストップCVD(心臓血管病)」が示す通り、本邦における心血管病の予防はますます重要となっています。私たち臨床家は日本動脈硬化学会が示す動脈硬化性疾患予防ガイドラインなどに従って疾病予防に取り組んでいますが、一般人口レベルで適切な指標コントロールが行われているかはデータが不足しています。

本研究では金沢市の8万人を超す健診データを用いた解析により、CVD予防のエビデンスが確立しているLDLコレステロールの管理状況について決して十分ではない現状を明らかにしました。特に慢性腎臓病を合併している方や、既にCVDを発症され二次予防を目的として管理されている方では目標に到達していないことが浮き彫りとなり、疾病予防を担う実地臨床家への警鐘を鳴らしています。

Abstract

AIM:

The Japan Atherosclerosis Society (JAS) guidelines for the prevention of atherosclerotic diseases 2012 (JAS2012) proposed lipid management targets; however, less data is available regarding the attainment rates of each target in community-based settings. Therefore, we assessed the attainment rates of lipid management targets among subjects who underwent Japanese specific health checkups.

METHODS:

A total of 85,716 subjects (male=29,282, 34.2%) aged 40-74 years who underwent specific health checkups from 2012 to 2014 in Kanazawa city, Japan, were included in this study. We evaluated the attainment rates of the lipid management targets according to the JAS2012 guideline and investigated the clinical characteristics of the subjects without achieving the targets.

RESULTS:

The target for LDL cholesterol (LDL-C) was the least attained in all risk categories, 89, 72, 50, and 34% for category I, II, III, and secondary prevention, respectively, in 2014. In addition, these rates inversely correlated with the grade of risk categories (p-value for trends <0.001). Attainment rate of the LDL-C target in the suspected chronic kidney disease (CKD) group was significantly lower than in the groups with diabetes, stroke, or absolute risk in category III (49.2, 60.3, 63.5, 54.4%, respectively, p-value <0.001 for each). Moreover, the attainment rate of the LDL-C target was significantly lower in subjects that did not receive lipid-lowering therapy than in those who received it in the secondary prevention (27.7 and 40.6%, respectively, p-value <0.001).

Attainment rates for lipid management targets (2014)

CONCLUSIONS:

Lipid management is inadequate in community-based settings, particularly, in subjects with CKD and secondary prevention.