クリニカルクラークシップ
I. 金沢大学附属病院・関連病院での臨床実習
当教室では、見学型臨床実習(BSL)を終えた医学部6年生に対して、より実践的な臨床能力を身に付ける臨床参加型実習であるクリニカルクラークシップ(クリクラ)を実施しています。金沢大学附属病院はもとより関連病院とも連携をとり、興味のある臨床科で実践的な臨床実習ができるようマネージメントしています。近年では新臨床研修制度に基づくマッチングの影響もあり、学外から当院や北陸地域の研修病院への見学希望も多くなっています。大学医局として一人ひとりの希望に沿った魅力あるプランを一緒に考えていきます。
Ⅱ. クリクラ・レポート
大学病院循環器内科での熱い1か月!
金沢大学医学類6年生(女性)
4月からの1ヶ月間、金沢大学附属病院の循環器内科で実習しました。実習を始めるにあたり、循環器病態内科学の担当の先生とよくプランを練り自分が医師になる前に何を学びたいのかを整理して、1ヶ月の計画を立てました。
まず心電図をたくさん読むことから始め、胸部レントゲン写真の基本的な読影法、初期研修医になった時に知っておかなければならない心エコーの基本所見をみっちり勉強することができました。指導医の先生にみて頂きながら担当患者さんの病歴を聴取し、身体所見をとり、検査結果についてディスカッションする濃密な毎日を過ごすことができました。超音波や心臓カテーテルなどの検査もただ見学するだけではなく、目的や結果の解釈を1つひとつ指導医の先生に教えて頂くことができ、循環器の面白さが分かってきた気がします。クリクラでは学生側から積極的に臨んでいけば、必ず実りある実習になると感じました。
大学病院・市中病院の組み合わせで多くの症例を経験!
金沢大学医学類6年生(男性)
私は市中病院の消化器内科で2週間実習し、その後、大学病院で2週間のリウマチ膠原病内科実習をデザインして頂きました。市中病院ではその症例数の多さに驚きながらも、多彩な消化器疾患の中でどんな疾患を見逃したらだめで、どんな状態になったら入院を考慮しなくてはいけないのか、ご家族にどのように説明をするのか等、BSLでは学べなかったことを実習できました。また、エコーや内視鏡の基本的な手技をとにかくたくさん見ることができ、症例数の多さが市中病院での実習の良い点だと感じました。この教室ではやる気があれば、個々の希望を叶えようとして下さるので、実習をするこちらも気が引き締まります。
大学病院のリウマチ膠原病内科では、一例一例をとことん追求して考え抜く姿勢に感銘を受けました。そして、ややこしい症例でも全身を系統立てて診ていくことで答えに近づくことができるというプロセスを見せて頂き、机上の勉強では味わえない興奮を得ることができました。クリクラでは自分の将来像をイメージする良い期間として過ごすことができました。
Ⅲ. 学生担当ドクターからのメッセージ
循環器内科
医師となった時に必ず臨床で力を発揮する循環器診療の基本をじっくり勉強して、たくさん体験しましょう。循環器疾患は緊急も多く、刺激的なクリクラになります。救急や集中治療の現場では医療の厳しい現実も目の当たりにしますが、皆さんと一緒に患者さんの笑顔をみることが目標です!夏のバーベキューやハートチームの懇親会などもあり、忙しい中にも楽しさを忘れず一緒に学びましょう!
内分泌・代謝内科
内分泌疾患の診断と治療、糖尿病の管理を基本から分かりやすく教えます。実際の患者さんの治療プログラムを指導医とディスカッションしながら計画する企画は毎年好評です。内分泌疾患は正しい診断ができると、患者さんが治療によりどんどん良くなっていく経過を実感できる魅力的な分野です。
実習中に日本内分泌学会などで学会発表を経験できるチャンスがあります。医師としての活動に必須のスライド作成やプレゼンテーションの極意を教えます!
リウマチ・膠原病内科、腎臓内科
クリクラ中には、BSLの実習と異なり敢えて少し複雑な背景をもつ患者さんや診断がやや難しい症例を担当して頂くことが多いです。一発診断の疾患や診断がついている患者さんを担当するよりも、悩ましい症例で系統立てて原因を探っていく診断のプロセスを勉強することが「生きた知識」になると考えているからです。時には学生さんの素朴な疑問が診断のきっかけになることもあります。考え、悩み、正しい診断や病態に迫れた時に味わえる知的な興奮を一緒に味わいましょう!
消化器内科
腹痛や消化器症状を訴える患者さんはとても多いですので、これらの症状に適切に対応できることは医師としての基本的な診療能力の1つです。消化器内科のクリクラではこれらの消化器症状へのプラクティスを実臨床で学び、超音波や内視鏡などの手技を見学し、消化器疾患の診断や治療を経験することができます。また、多くの急性疾患で消化管免疫を考慮した適切な栄養管理はとても重要な役割を担っています。免疫・栄養に関する知識を身につけ、一歩も二歩も進んだ状態で研修医生活をスタートしてみませんか!?
初期臨床研修 ~総合内科医局で臨床医としての基礎を築く~
Ⅰ. 当教室での初期臨床研修の特徴
私たち「循環器病態内科学教室」は循環器領域、内分泌代謝・糖尿病領域、リウマチ膠原病領域、腎疾患領域、消化器領域を統合した総合内科講座(医局)です。この特徴を最大限に生かし、初期臨床研修プログラムでは各グループを自由に選択しながら、総合力ある臨床医として涵養すべき診療能力を身につけて頂くことを目標にしています。
“人を育て、我々も育つ”の理念のもと、専門医研修を行っている3年目~5年目のレジデント、さらに大学院生や専門医を目指して医局に在籍する若手~中堅の医師が屋根瓦方式で研修医の皆さんを指導します。
さらに、それぞれの診療科を統括する指導医クラスの医師は各領域で国内のオピニオンリーダーであり、国内外での最新の知識、技術、エビデンスを学ぶことが可能です。
北陸を網羅する関連病院と連携してニーズに沿った研修プラン作成が可能です。関連研修病院には1〜3次疾患まで幅広く診る総合病院が多く、当教室出身の熟練医の指導のもと内科全般を経験することが可能です。
内科専門医および各個人のサブスペシャリティ希望を見据え、プランに工夫を凝らすことで必要な症例を初期研修中に経験することが可能です。
Ⅱ. 循環器病態内科学(旧第二内科)内科専門コース
医師の初期臨床研修制度は、将来専門とする分野にかかわらず、基本的な診療能力を身につけることを目的に平成16年(2004年)から必修化されました。金沢大学附属病院では研修医・専門医総合教育センターを中心に初期研修を支援しています。当院の初期臨床研修プログラムの特徴の一つとして、各科の専門プログラムを設置していることがあります。このプログラムでは、初期研修のうちから将来志望する科を決めている研修医が、より早期から専門的な知識・技術を身に着けることができることを目的としています。
当教室においても、内科系専門プログラムにおいて、内科を志望している研修医に対し、独自のプログラムを準備しています。当教室には初期研修・専門医研修に従事している医師も在籍しており、研修医各々のキャリア形成を考えながら、さらに来るべき新専門医制度にも対応できるよう取り組んでいます。
注:金沢大学には複数の内科医局が存在します。コンフリクトを避けるために当教室の見学・研修を希望される場合においても、当教室と金沢大学附属病院・研修センターが協議の上、プランを策定します。
Ⅲ. 金沢市・金沢大学附属病院周辺について
金沢市は人口約45万人の北陸最大の都市で、緑豊かな環境の中に歴史と文化の佇まいを持つ中核市です。金沢大学医学部キャンパス(宝町キャンパス)および附属病院は金沢城址・兼六園へと続く小立野台地にあり、古くからの学生街として学ぶ者を温かく受け入れる歴史と風土があります。学生やレジデント向けの住環境は充実しており、多くの研修医が徒歩圏内~車で数分圏内に住んでいます。
金沢駅や飲食街へのアクセスは良好で、特に中心部の都市再開発により華やかな街並みとなっています。1年を通して、お祭り、音楽イベント、スポーツイベントなどが開催されています。少し足を延ばせば、白山麓、能登半島をはじめとした雄大な自然があり、和倉温泉・加賀温泉・湯涌温泉といった温泉郷もあります。忙しい臨床の合間にも楽しみの多い街と言えるでしょう。
2015年には首都圏と北陸新幹線でダイレクトに結ばれました(金沢⇔東京:約2時間半)。地理的なデメリットは大きく軽減され、リーディングエッジな知識・技術の交流が起こっています。金沢に基盤を持ちながら日本全国、そして世界へ活躍の場を広げる臨床医が増えています。
是非、多くの医学生に興味を持って頂き、我々の仲間になって頂ければと思います。ご興味をお持ちの方は、問合せフォームから見学申し込みや、進路相談内容を送信してください。お待ちしております!
Ⅳ. 各診療科での初期臨床研修の特徴
循環器内科
基礎的な循環器診察能力をとことん追求する
循環器疾患の病態生理を理解し診療に活かす
救急医療、集中治療で必要な知識を身につける
全ての臓器は循環を必要としており、その理解は診療に必要不可欠です。近年注目されている生活習慣病についての多くの研究が心血管イベントの予防を目標としており、これからの時代も循環器内科はその中心的な役割を果たしていきます。不幸にして心臓血管でのイベントが発症した場合にも、適切な処置を自ら行い、指導することができるのも循環器内科の医師です。また、循環器医は外科的手術の術前リスク評価や周術期の管理においても重要な役割を果たします。さらに、救急・集中治療の現場においても、そのサブスペシャリティとして循環器を専門としていることは、大きなメリットです。皆さんの若い情熱を期待しています。
内分泌・代謝内科
様々な内分泌疾患を経験できる
糖尿病について治療方針を決定できる
代謝疾患を通じて多臓器にわたりアセスメントする
高血圧症、電解質異常、肥満症など日常でよく遭遇する疾患の中には見逃してはいけない内分泌疾患が隠れていることが多々あります。これらの内分泌疾患は疑って検査をしないと絶対に見つからない病気ですが発見することで患者さんの予後を大きく改善したり、今まで分からないとされていた症状に対して治療ができることが多々あります。コモンディジーズの中から内分泌疾患を見つけ出せるようになるスキルを一緒に身につけていけるようになることが研修の1つのポイントです。
また、糖尿病も当科の診療の軸の1つです。糖尿病というと「血糖をコントロールするだけ」と思われるかもしれませんが、血糖のみならずその背景にある疾患や糖尿病からの合併症も含めて広くアセスメントをする、いわゆる総合診療に近い面もあると思います。代謝疾患を通じて広く患者さんを診ることができるスキルを身につけていきましょう。
リウマチ・膠原病内科、腎臓内科
様々な膠原病が経験できる
腎臓病・透析治療・特殊血液浄化を経験できる
全身を診るトレーニングを通じて、総合内科医としての素養を身につける
関節リウマチにおける肺・血管病変、全身性エリテマトーデスにおける脳・心・腎・皮膚病変など膠原病は全身に及ぶ疾患であり、診断がつかない症例のコンサルトを受ける機会も多いですが、診断がついたときの喜び、治療により患者さんが回復していく過程に立ち会える喜びは非常に大きく、感動的です。また、当科は関連病院に腎専門病院を多く擁することから、多数の腎疾患を治療する機会があり、通常の透析治療から特殊血液浄化まで経験することができます。そして大学病院であることから、北陸でもトップレベルの症例数、および多彩な疾患を治療しており、こういった患者を総合的に診断・治療していくことで、総合内科医としての素養を身につけることができます。
消化器内科
消化器疾患の検査、鑑別診断を経験する
消化器疾患診断モダリティの基礎を学ぶ
総合内科医としての素養を身につける
消化器内科の特徴としては、肝・胆・膵・消化管と、幅広い臓器の疾患を取り扱うこと、そして超音波・CT・MRI・内視鏡をはじめ、画像検査が非常に多い事があげられます。といっても、診療の第一歩は患者さんの診察から始まります。患者さんの訴え、全身の診察から鑑別疾患、必要な検査を進めていきます。また、吐血、下血の緊急内視鏡治療など、救急医療の緊迫感もあわせもっています。近年の高齢化社会を背景として、いくつもの臓器に疾患を有する患者さんも多く、他科と連携して診療を進めなければいけません。大学病院では各臓器でトップレベルの診療体制が整っており、日々内科医として先進の技能を経験することが出来ます。