金沢大学臓器機能制御学教室では、幅広い研究意識を持って基礎、臨床研究を進める意味から、多施設共同研究にも多く参加いたしております。ここ最近、臨床、基礎的研究論文が相次いで発表されましたので、紹介させて頂きます。
1.Miyauchi K, Daida H, Morimoto T, Hiro T, Kimura T, Nakagawa Y, Yamagishi M, Ozaki Y, Kadota K, Kimura K, Hirayama A, Kimura K, Hasegawa Y, Uchiyama S, Matsuzaki M; for the JAPAN-ACS Investigators.
Reverse Vessel Remodeling But Not Coronary Plaque Regression Could Predict Future Cardiovascular Events in ACS Patients With Intensive Statin Therapy.
Circ J 2012; 76: 825-832
ピタバスタチンとアトルバスタチンを用いての、急性冠症候群における動脈硬化粥腫への退縮効果を検証した一連のJAPAN-ACS研究の延長版です。積極的にLDLコレステロールを低下させることによる予後改善効果が、粥腫の退縮とともに血管自身のnegative remodeling効果が大切であることを示した論文です。予後まで追跡した貴重な多施設共同研究です。
2.Yu M, Ishibashi-Ueda H, Ohta-Ogo K, Gabbiani G, Yamagishi M, Hayashi K, Hirota S, Bochaton-Piallat ML, Hao H.
Transient expression of cellular retinol-binding protein-1 during cardiac repair after myocardial infarction.
Pathol Int. 2012 Apr;62(4):246-53.
虚血性心疾患におけます、心室のリモデリング現象は、心不全発症などの予後を規定する重要な因子といえます。この研究では、実験的心筋梗塞モデルにおけますレチノ酸のリモデリング発生における意義を検討したものです。その結果、梗塞モデルにおいては、レチノ酸結合タンパクの発現増加が認められ、レチノ酸の結合増加を惹起していることが推定されました。ヒト心筋梗塞でも同様の所見も認めています。新たな薬剤ターゲットとして注目されるところです。
3. Hibi K, Kimura T, Kimura K, Morimoto T, Hiro T, Miyauchi K, Nakagawa Y, Yamagishi M, Ozaki Y, Saito S, Yamaguchi T, Daida H, Matsuzaki M; JAPAN-ACS Investigators.
Clinically evident polyvascular disease and regression of coronary atherosclerosis after intensive statin therapy in patients with acute coronary syndrome: serial intravascular ultrasound from the Japanese assessment of pitavastatin and atorvastatin in acute coronary syndrome (JAPAN-ACS) trial.
Atherosclerosis. 2011 Dec;219(2):743-9. Epub 2011 Aug 22.
JAPAN-ACS研究のサブ解析です。急性冠症候群に対しての積極的な脂質低下量が冠動脈粥腫の退縮をきたし、予後改善効果にも貢献することが予想されています。その中で、末梢血管障害などを有する、多血管障害症例では、かかる積極的療法をより強化する必要があることを示した論文です。
金沢大学臓器機能制御学教室では、オリジナリティーの高い多施設共同研究を今後も積極的に推進して参ります。