わたしたちの研究室は、臨床で生じた疑問や発見を基礎的手法を用いて解明し、最終的には臨床に還元することを目標としています。従来の遺伝子解析に止まらず、次世代シーケンス法を用いた網羅的解析により新たな病原分子を発見し、iPS細胞など培養細胞レベルやゼブラフィッシュなど小動物レベルで機能解析を行い、ブタなど大型動物で治療デバイスの効果を実証し、さらには血管・心筋再生療法にむけたトランスレーショナルリサーチにも取り組んでいます。希望者には国内外の研究施設への留学を推進し、グループ全体のレベルアップを計っています。最終的には研究成果を国際誌へ投稿し、病気で苦しむ世界中の患者さんの治療に生かしています。
循環器研究室チーフ
川尻剛照
Masa-aki Kawashiri, M.D., Ph.D.
心血管疾患臨床研究グループ
リーダー
坂田 憲治
サブリーダー
中橋 卓也
主な研究内容
- 多施設共同レジストリー(冠動脈インターベンション、心房細動、経カテーテル大動脈弁置換術などのデータ収集による仮説の検証)
- 薬剤介入などによる多施設前向きランダム試験
- 血管内イメージングデバイスを用いた臨床研究
- 重症大動脈弁狭窄症の新しい診断、治療に関する臨床研究
- 冠動脈バイパス術後症例の冠動脈インターベンション後の予後の検討
詳細な研究実績(論文)はこちらへ。
研究室の概要
医療者という“physician”としての仕事をする上で、実臨床にエビデンスとして確立していない多くの疑問点に直面します。実臨床における現場での経験や、臨床で疑問に感じたことをそのままにせず、”scientist”として症例報告や研究に昇華させていくことが大切だと考えております。
当研究グループでは、その素朴な臨床での疑問をresearch questionとして研究計画を立案し、収集したデータを解析し、解釈するプロセスを経て得られた結果が、より広い範囲での医療者、ひいては患者さんにフィードバックさせることが出来るような臨床研究を行い、さらにはそのようなマインドを持つ“physician scientist”を養成することを目標としています。
特に循環器領域で多く経験する、冠動脈疾患、心房細動、心不全といった疾患においては、その臨床での疑問に対して、北陸地方の多くの関連病院と共同で多施設共同レジストリーやケースコントロール研究を行い、そのデータをもとに仮説として提唱し、さらにその仮説の一般性や妥当性について、多施設前向きランダム試験にて立証し、臨床に役立たせる研究の実践を推進して行きます。また、近年では、海外との共同研究にも積極的に参加しています。その国際研究では冠動脈インターベンション術後の抗血小板療法の期間、合併症などの国際調査を行っています。
また、各研究グループから得られた知見や疑問を実臨床に還元させるために、臨床研究への架け橋となる横断的なトランスレーショナル研究を目指しています。
ランドマーク論文 当グループの代表的な論文を紹介します
Kawashiri MA, Sakata K, Gamou T, Kanaya H, Miwa K, Ueda K, Higashikata T, Mizuno S, Michishita I, Namura M, Nitta Y, Katsuda S, Okeie K, Hirase H, Tada H, Uchiyama K, Konno T, Hayashi K, Ino H, Nagase K, Terashima M, Yamagishi M.
Impact of combined lipid lowering with blood pressure control on coronary plaque regression: rationale and design of MILLION study.
Heart Vessels. 2015 Sep;30(5):580-6.
解説:金沢大学循環器内科と北陸、横浜の金沢大学関連病院との共同で行われた多施設前向きランダム化比較試験のプロトコール論文です。脂質異常症、高血圧を合併した冠動脈疾患患者を対象として、アムロジピンとアトルバスタチンの併用療法を標準治療群と積極的治療群に無作為割り付けを行い、血管内超音波を用いた冠動脈プラークの進展、退縮をアウトカム指標として評価を行った研究です。すでに症例登録、データ解析も終了し、最終結果は、アメリカ合衆国心臓血管インターベンション学会(The Society for Cardiovascular Angiology and Interventions Foundation: SCAI)のLate Braking Clinical Trialにて報告しました。
Kawashiri MA, Sakata K, Uchiyama K, Konno T, Namura M, Mizuno S, Tatami R, Kanaya H, Nitta Y, Michishita I, Hirase H, Ueda K, Aoyama T, Okeie K, Haraki T, Mori K, Araki T, Minamoto M, Oiwake H, Ino H, Hayashi K, Yamagishi M.
Impact of lesion morphology and associated procedures for left main coronary stenting on angiographic outcome after intervention: sub-analysis of Heart Research Group of Kanazawa, HERZ, Study.
Cardiovasc Interv Ther. 2014 Apr;29(2):117-22.
解説:金沢大学循環器内科と関連病院による多施設共同研究HERZ studyのサブ解析論文です。左冠動脈主幹部へのステント留置についての予後に関する解析を行っています。その結果、同部位に対しては、単純病変への薬剤溶出性ステント1本のステント留置が最も予後が良好なことが示されています。
Uchiyama K, Ino H, Hayashi K, Fujioka K, Takabatake S, Yokawa J, Namura M, Mizuno S, Tatami R, Kanaya H, Nitta Y, Michishita I, Hirase H, Ueda K, Aoyama T, Okeie K, Haraki T, Mori K, Araki T, Minamoto M, Oiwake H, Konno T, Sakata K, Kawashiri M, Yamagishi M; Heart Research Group of Kanazawa.
Impact of severe coronary disease associated or not associated with diabetes mellitus on outcome of interventional treatment using stents: results from HERZ (Heart Research Group of Kanazawa) analyses.
J Int Med Res. 2011;39(2):549-57.
解説:金沢大学循環器内科および関連病院での冠動脈形成術(PCI)施行例の成績、予後規定因子などを検討した、多施設共同研究HERZ (Heart Research Group of Kanazawa) studyの論文です。過去3年間に施行された7,700例のPCI例において、左冠動脈主幹部病変を除けば、薬剤溶出性ステントを用いたPCI成績は、比較的良好な経過をみています。但し、糖尿病合併症例に薬剤非溶出性ステントを用いる場合には、再狭窄などへの十分な対策が必要との成績が示されています。今後、前向き試験を行うに当たっての貴重な基礎データが示された論文と言えます。
動脈硬化研究グループ
リーダー
川尻 剛照
サブリーダー
多田 隼人
主な研究内容
- 次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析
- メンデル型遺伝病(特に遺伝性脂質異常症)に対する分子遺伝学的研究
- 血管内イメージングデバイスを用いた動脈硬化症の画像評価
- 脂質代謝異常症のin vivo代謝実験
- 新規脂質低下剤の有効性に関する臨床研究
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研究室の概要
当研究室では、動脈硬化性心血管疾患を対象に研究に取り組んでいます。臨床面では、動脈硬化性疾患の先進的経血管治療効果を最新の画像診断技術で評価し、薬物療法の効果を評価しています。今後、新規脂質低下剤が登場しますが、積極的に情報を発信して参ります。家族性高コレステロール血症に関しては、国内で最多と思われる2,000例を超える経験を有し、稀少疾患を含めほぼ全ての遺伝性脂質代謝異常症を経験しています。中でも、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症を世界に先駆け発見し、CETP阻害剤の開発への礎を築きました。また、PCSK9機能亢進型遺伝子変異症ホモ接合体や常染色体劣性高コレステロール血症を経験し、その代謝異常のメカニズムを報告しました。近年では、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析法を駆使し、新規原因分子の探索に挑戦しています。臨床に根ざした基礎研究から、動脈硬化症の全容解明と撲滅を目標とし、国内のみならず海外の一流の臨床・研究グループとの共同研究も積極的に展開しています。
ランドマーク論文 当グループの代表的な論文を紹介します
Hopkins PN, Defesche J, Fouchier SW, Bruckert E, Luc G, Cariou B, Sjouke B, Leren TP, Harada-Shiba M, Mabuchi H, Rabès JP, Carrié A, van Heyningen C, Carreau V, Farnier M, Teoh YP, Bourbon M, Kawashiri MA, Nohara A, Soran H, Marais AD, Tada H, Abifadel M, Boileau C, Chanu B, Katsuda S, Kishimoto I, Lambert G, Makino H, Miyamoto Y, Pichelin M, Yagi K, Yamagishi M, Zair Y, Mellis S, Yancopoulos GD, Stahl N, Mendoza J, Du Y, Hamon S, Krempf M, Swergold GD. Characterization of Autosomal Dominant Hypercholesterolemia Caused by PCSK9 Gain of Function Mutations and Its Specific Treatment With Alirocumab, a PCSK9 Monoclonal Antibody.
Circ Cardiovasc Genet. 2015 Dec;8(6):823-31.
解説:遺伝性心血管疾患の中でも高頻度であるものの一つとして家族性高コレステロール血症(FH)があります。従来は肝臓におけるLDL受容体の遺伝的機能障害による単一遺伝子疾患とされてきましたが、近年、LDL受容体の分解酵素であるPCSK9と呼ばれる蛋白の機能異常により同様にFHの病態を呈することが示されてきました。我々が2010年に行った世界初のPCSK9ホモ接合体異常症の報告に続き、今回はヘテロ接合体における臨床像に関する国際共同研究です。
Kawashiri MA, Nohara A, Noguchi T, Tada H, Nakanishi C, Mori M, Konno T, Hayashi K, Fujino N, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M. Efficacy and safety of coadministration of rosuvastatin, ezetimibe, and colestimide in heterozygous familial hypercholesterolemia.
Am J Cardiol. 2012 Feb 1;109(3):364-9.
解説:難治性脂質異常症である家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体を対象に、国内で承認される最大限の薬物療法の効果を検証しました。LDLコレステロール値は約66%低下しましたが、44%の症例が依然LDLコレステロール値100mg/dL未満を達成できませんでした。同時に血漿PCSK9値は79%上昇していることを明らかとし、かかる難治性症例にPCSK9阻害剤の効果が期待されます。
Tada H, Kawashiri MA, Ikewaki K, Terao Y, Noguchi T, Nakanishi C, Tsuchida M, Takata M, Miwa K, Konno T, Hayashi K, Nohara A, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M. Altered metabolism of low-density lipoprotein and very-low-density lipoprotein remnant in autosomal recessive hypercholesterolemia: results from stable isotope kinetic study in vivo.
Circ Cardiovasc Genet. 2012 Feb 1;5(1):35-41.
解説:本論文は、2012年度の日本動脈硬化学会若手研究者奨励賞・優秀賞を受賞した論文です。この論文は、本邦2家系目の希少な劣性遺伝性疾患の発見から、その機能解析を行い、肝細胞においてLDL受容体のアダプター蛋白であるLDLRAP1蛋白の機能を明確とした点が高く評価されました。Figure 2にありますように、本家系に対する調査は約100名にも及び、症例の発見から報告まで5年を要した力作です。
分子心臓病研究グループ
リーダー
藤野 陽
サブリーダー
林 研至
サブリーダー
今野 哲雄
主な研究内容
- 心血管再生医学・医療
- 心筋症の遺伝子解析、機能解析
- 不整脈の遺伝子解析、機能解析
- 心筋不全の病態解明、再生医療
- 多施設共同研究
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研究室の概要
近年、遺伝学的診断技術の進歩により心血管疾患に関わる多くの遺伝子変異が同定され、これまで不明とされてきた数多くの心血管疾患の病態が次々と解明されています。当グループは本邦における遺伝性心筋症研究のオピニオンリーダーとして、毎年多数の学会発表、論文発表を行っています。400家系以上に及ぶ巨大な肥大型心筋症コホートを有し、原因遺伝子変異と疾患予後の関連性についての多施設共同研究においても中心的な役割を果たしています。また、遺伝性心筋症は肥大型心筋症や拡張型心筋症のような構造的機能的な異常を来す心筋疾患群のみではなく、イオンチャネル病を含めた包括的な疾患群であるとの理念を持ち、遺伝性QT延長症候群やBrugada症候群などの遺伝子変異に関する研究を数多く行ってきました。特にQT延長症候群では、遺伝子解析による遺伝子型の同定が治療方針の決定に極めて有用です。動物培養細胞、ゼブラフィッシュ胚、iPS細胞を用いて個々の遺伝子変異の機能評価、薬効評価などを行い、それぞれの患者様に応じた治療方針の決定を目指しています。このように当グループでは、得られた科学的知見を遺伝子治療及び再生医療に発展させるべく、国内外の他の研究機関や教室内での横断的な研究体制を確立し、研究を進めています。
近年では、従来の方法で原因遺伝子変異の特定が困難であった症例に対して次世代シーケンサーを用いて網羅的な遺伝子解析を進めています。得られた遺伝子解析結果から病原性の高い変異をバイオインフォマティクスを用いて抽出し、培養細胞やゼブラフィッシュを用いた機能解析を行い、新規治療法の開発に向けて日々研究を行っています。
ランドマーク論文 当グループの代表的な論文を紹介します
Hayashi K, Konno T, Tada H, Tani S, Liu L, Fujino N, Nohara A, Hodatsu A, Tsuda T, Tanaka Y, Kawashiri MA, Ino H, Makita N, Yamagishi M.
Functional Characterization of Rare Variants Implicated in Susceptibility to Lone Atrial Fibrillation.
Circ Arrhythm Electrophysiol. 2015 Oct;8(5):1095-104.
解説:近年、日本人の脳梗塞の主要な原因である心房細動(AF)は新たな国民病とも言われています。その原因は加齢、高血圧、心不全、心筋症などがよく知られていますが、一部の孤発性心房細動(lone AF)は家族性であることが明らかになっています。本論文は、lone AF 90人に遺伝子解析と機能解析を行い、8人(8.9%)にAF発症に関与する遺伝子変異を見出しました。更にその一部にはイオンチャネルの機能亢進変異が認められており、これらの症例に対してはイオンチャネル阻害薬が有効と考えられます。今後の創薬に繋がる重要な研究成果と言えます。
Hodatsu A, Konno T, Hayashi K, Funada A, Fujita T, Nagata Y, Fujino N, Kawashiri MA, Yamagishi M. Compound heterozygosity deteriorates phenotypes of hypertrophic cardiomyopathy with founder MYBPC3 mutation: evidence from patients and zebrafish models.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2014 Dec 1;307(11):H1594-604.
解説:肥大型心筋症における「遺伝子変異の重複」に関する臨床・実験論文です。遺伝子変異が重複すると、より早期に発症し、より重症となることを示しました。ゼブラフィッシュを用いて重複遺伝子変異モデルを確立しました。今後の疾患モデル作成やその先にある病態解明、創薬に向けた礎となる大変重要な論文です。
Sarcomere gene mutations are associated with increased cardiovascular events in left ventricular hypertrophy: results from multicenter registration in Japan.
Fujita T, Fujino N, Anan R, Tei C, Kubo T, Doi Y, Kinugawa S, Tsutsui H, Kobayashi S, Yano M, Asakura M, Kitakaze M, Komuro I, Konno T, Hayashi K, Kawashiri MA, Ino H, Yamagishi M.
JACC Heart Fail. 2013 Dec;1(6):459-66.
解説:左室心筋肥大を呈する患者さんは日常的に臨床で遭遇しますが、肥大型心筋症と高血圧による左室肥大の鑑別は必ずしも容易ではありません。本研究では全国主要施設との共同研究の結果、心筋サルコメア遺伝子に変異を認め、遺伝学的に肥大型心筋症と診断された患者さんは、高血圧により心筋の求心性肥大を来した患者さんより心不全入院などのイベントが明らかに多いことを示しました。本研究の結果は、毎日新聞社会面に取り上げられ、大きな反響を呼びました。
先進医工学研究グループ
リーダー
中西 千明
サブリーダー
吉牟田 剛
主な研究内容
- 組織体性幹細胞を用いた組織再生医療の基礎的検討
- iPS細胞を用いた遺伝性疾患の発症機序の解明と新規治療法の検討
- 大動物を用いた冠動脈治療用カテーテルの検証:新規開発からその有効性について
- 動脈硬化性疾患と組織体性幹細胞の関連検討
- 新規不整脈治療:バイオペースメーカーの開発
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研究室の概要
当研究室では、様々な心疾患の発症機序の解明と新規治療法の開発を目的とし、細胞レベルから大動物を用いた研究、さらに臨床研究を行っています。遺伝性心疾患では、疾患由来iPS細胞を作製し、その疾患の発症機序および新規治療法の探索について検討しています。現在は、代謝性疾患や遺伝性不整脈を中心に検討を行い、国内外の学会にて発表を行っています。新規治療法の開発では、間葉系幹細胞、心筋前駆細胞、血管内皮前駆細胞などといった体性幹細胞を用いた移植治療の有効性を、小動物および大動物を用いて検討しているだけでなく、細胞移植デバイスの新規開発などといった医工学分野も含め、細胞移植の臨床応用を視野に入れ、総合的に検討しています。
臨床研究では、狭心症や心筋梗塞さらに閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患を対象とし、動脈硬化と体性幹細胞の関連について臨床研究を行っております。虚血性疾患では、血管新生に関与する血管内皮前駆細胞の動態は非常に重要であると考え、これら関連を検討することで、新規治療法への探索を行っています。
ランドマーク論文 当グループの代表的な論文を紹介します
Takabatake S, Hayashi K, Nakanishi C, Hao H, Sakata K, Kawashiri MA, Matsuda T, Yamagishi M.
Vascular endothelial growth factor-bound stents: application of in situ capture technology of circulating endothelial progenitor cells in porcine coronary model.
J Interv Cardiol. 2014 Feb;27(1):63-72.
解説:循環器診療では冠動脈狭窄に対してカテーテルを用いて冠動脈ステントを留置する治療が日常的に行われています。近年、ステント再狭窄を予防する目的で薬剤溶出ステントが頻用されていますが、薬剤やポリマーにより血管内皮機能が障害されステント血栓症を起こすなどの問題点があります。この論文では、早期内膜形成を目的として新規開発した冠動脈ステントの効果を検討し、報告しています。既存の抗CD34抗体結合ステントと比較して、新規作製したVEGF結合ステントは、循環している血管内皮前駆細胞を効率よく捕捉し、さらに捕捉した血管内皮前駆細胞の増殖を促進させることが認められました。ステント留置早期の内膜形成は、急性ステント内血栓症予防に効果的である可能性があり、今後臨床応用も期待される新規ステントと考えられます。
Tsubokawa T, Yagi K, Nakanishi C, Zuka M, Nohara A, Ino H, Fujino N, Konno T, Kawashiri MA, Ishibashi-Ueda H, Nagaya N, Yamagishi M.
Impact of anti-apoptotic and anti-oxidative effects of bone marrow mesenchymal stem cells with transient overexpression of heme oxygenase-1 on myocardial ischemia.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2010 May;298(5):H1320-9.
解説:様々な心疾患で極端に心機能が悪化した患者さんでは心臓移植が適応となる場合がありますが、本邦ではドナー不足の問題から長期間の心臓移植待機中に亡くなる方が多いのが現状です。近年、代替法として再生治療が注目されていますが、再生機能を持った万能細胞を直接心臓に移植することは生着率の問題などから実用化に至っていません。この論文では、移植細胞を前処置することで移植細胞の効果を向上させることが可能であると報告しています。虚血性心疾患では、病変部に移植された細胞は虚血環境下となり、その生着率、生存率が低下することが想定されています。本研究では、骨髄由来間葉系幹細胞に抗酸化作用を有する遺伝子を導入することで、虚血環境下での忍容性を向上させ、移植細胞の生存率を改善し、細胞移植治療の効果を向上させることが可能であることを報告しています。
Nakanishi C, Yamagishi M, Yamahara K, Hagino I, Mori H, Sawa Y, Yagihara T, Kitamura S, Nagaya N.
Activation of cardiac progenitor cells through paracrine effects of mesenchymal stem cells.
Biochem Biophys Res Commun. 2008 Sep 12;374(1):11-6.
解説:この論文では、従来、心筋障害に効果的であった骨髄由来間葉系細胞の効果を確認するため、心筋に存在する心筋前駆細胞への影響を様々な角度から検証したものです。骨髄間葉系細胞からは多種のサイトカインや成長因子が分泌されることが知られていましたが、今回の検討で、これらがパラクライン的効果として心筋前駆細胞を刺激し、細胞移動や増殖を誘起するとの成績を示しました。心血管再生医学の分野での新しい知見として注目されます。