2015年10月24日土曜日、金沢大学医学部教育棟第2講義室において、カリフォルニア大学サンフランシスコ校 内科学教授で「内科医の頂点」「鑑別診断の神様」と称されるローレンス・ティアニー先生を招いて症例カンファレンスを開催しました。
もちろん英語で進められますが、当教室出身で自治医科大学 総合診療内科教授の松村正巳先生をディスカッサントとして迎え、例年通り重要なポイントで適宜コメント・補足して頂きました。金沢大学の学生や北陸3県の初期研修医はもちろん、北陸3県から指導医クラスの先生まで約80名の方に参加して頂き、会場の学生用講義室が最後列まで埋まる盛況ぶりでした。
事前にお知らせしていない2症例について、主訴、病歴、身体所見の順に情報が増えていく中でどのように鑑別診断を整理し統合していくかを論理的に展開されました。1症例目は当科 和田明梨 医師がプレゼンされ、3週前からの発熱を呈した特に既往のない65歳男性で、最終診断は巨細胞性動脈炎の方でした。不明熱は内科医にとって最もチャレンジングな状況の1つですが、ティアニー先生は”Complicated disease, easy test.”と言い切られ、病歴と身体所見から適切に鑑別診断を絞り込む過程を示されました。
ティアニー先生はアメリカで老舗の内科教科書である「Current Medical Diagnosis and Treatment」の主幹編集者を2008年まで務められました。2004年~2005年頃にかけては松村先生が当時勤務されていた石川県立中央病院(関連病院参照)での勉強会に多くの医学生や若手医師が詰めかけ、このCurrentを持ってサインの列に並んだものでした。
その医師たちは今や全国の教育機関・医療機関で主軸となって活躍しています。
ティアニー先生の診断理論や珠玉のパールは松村先生の訳で世に出ています。
2症例目は当科 堀田成人 医師がプレゼンされ、3ヶ月続く発熱を認めたSLE治療中の39歳女性で、最終診断はクリプトコッカス髄膜炎の方でした。複雑な神経所見を呈した難解な症例でしたが、”髄液所見からはListeriaらしい”など細かいコメントをされた一方で、注意すべき頭痛の性状や、”Sinus tachycardia never lies.(何か悪いことが起きており、重症を示唆する)”といった基本的なパールも紹介されました。
会の後に行ったアンケートでは、ほぼ全員の参加者が「満足」「今後も参加したい」と答えて頂きました。
臨床推論について学ぶことのできる大変良い機会であり、今後も当科を中心に質の高い症例提示を続けていきます。なお、過去には医学生の方がプレゼンされたこともあります。
Tierney先生を招いて研修医のための臨床セミナーを開催しました(2007年)
内容や英語については当科医師がサポートしますので、症例提示を希望される方は声を掛けて下さい。
リウマチ・膠原病内科 鈴木 康倫