金沢大学臓器機能制御学教室では、臨床、教育、研究を進めるにあたって大切な、学会発表、論文発表を強く勧めています。今回は、秋以降に公表されます当科からの主要論文を紹介します。
①Tada H, Kawashiri MA, Ikewaki K, Terao Y, Noguchi T, Nakanishi C, Tsuchida M, Takata M, Miwa K, Konno T, Hayashi K, Nohara A, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M.
Altered Metabolism of Low-density Lipoprotein and Very Low-density Lipoprotein Remnant in Autosomal Recessive Hypercholesterolemia: Results from Stable Isotope Kinetic Study in vivo.
Circ Cardiovasc Genet. 2011 Dec 9. [Epub ahead of print](インパクトファクター=推定5.5)
ご存知、循環器内科多田隼人先生らによります論文です。大変稀な常染色体劣性遺伝形式をとります家族性高コレステロール血症症例でのリポ蛋白代謝を、安定同位体元素を用いて解析したもので、今までよく知られていなかったコレステロール代謝経路が明らかとなるとともに、この系への介入の可能性が示唆されています。本論文は、一旦Circulation誌にrejectに近い査読を受けましたが、根性を出して再査読に回して、要約受理された論文です。
②Ohtani R, Inazu A, Noji Y, Wakasugi T, Miwa K, Tada H, Kawashiri MA, Noguchi T, Nohara A, Kobayashi J, Koizumi J, Yamagishi M, Mabuchi H.
Novel mutations of cholesteryl ester transfer protein (CETP) gene in Japanese hyperalphalipoproteinemic subjects.
Clin Chim Acta. 2011 Nov 19. [Epub ahead of print](インパクトファクター=2.388)
脂質研究グループによる、新しいCETP関連遺伝子の変異に関する報告です。CETPはコレステロールの逆転送系を司る分子で、この欠損家系ではHDLコレステロール値が上昇し、抗動脈硬化的作用を示唆しています。HDLコレステロール代謝を考察にあたって、大変興味深い成績です。
③Kawashiri MA, Nohara A, Noguchi T, Tada H, Nakanishi C, Mori M, Konno T, Hayashi K, Fujino N, Inazu A, Kobayashi J, Mabuchi H, Yamagishi M.
Efficacy and Safety of Coadministration of Rosuvastatin, Ezetimibe, and Colestimide in Heterozygous Familial Hypercholesterolemia.
Am J Cardiol. 2011 Nov 21. [Epub ahead of print](インパクトファクター=3.68)
循環器内科講師川尻剛照先生によります、治療抵抗性家族性高脂血症症例でのコレステロール低下薬の作用に関する臨床研究です。スタチンを始め、複数のコレステロール低下薬を使用する機会が増加しています。それらの、作用、副作用を臨床例で厳密な基準に基づいて検証した論文です。単剤の増量より、作用機序の異なる薬剤の組み合わせがより効果的であることを示しています。川尻講師は、循環器グループのチーフと病棟医長を兼務する多忙な傍ら、コツコツと業績を挙げつつあります。
④Oka R, Yagi K, Sakurai M, Nakamura K, Moriuchi T, Miyamoto S, Nohara A, Kawashiri MA, Takeda Y, Yamagishi M.
Insulin secretion and insulin sensitivity on the oral glucose tolerance test (OGTT) in middle-aged Japanese.
Endocr J. 2011 Nov 9. [Epub ahead of print](インパクトファクター=1.952)
ご存知、北陸中央病院内科(内分泌代謝内科)と当教室との共同発表論文です。筆頭著者の大家理恵先生は、危険因子としての肥満とその他の因子の関連についての研究では、世界的に名が通っています。今回は、中年日本人でのインスリン分泌能などを、多数の検診症例から検討しています。この年齢層でもインスリン感受性の低下が食後高血糖と深い相関を有することが示されています。
⑤Miwa K, Matsubara T, Yasuda T, Inoue M, Teramoto R, Kinoshita H, Okada H, Yakuta Y, Kanaya H, Kawashiri M, Yamagishi M.
Spontaneous healing of posttraumatic focal coronary aneurysm: A case report.
Heart Lung. 2011 Nov 2. [Epub ahead of print]
石川県立中央病院循環器内科三輪健二先生と当科の共同発表症例論文です。外傷性と思われる冠動脈の解離が自然に閉鎖する現象を記載したものです。同様の症例における治療方針の決定の参考になる症例報告です。
災害時の通信にはアマチュア無線が効果的です。
⑥Matsumura M, Ito K, Kawamura R, Fujii H, Inoue R, Yamada K, Yamagishi M, Kawano M.
Pneumococcal vertebral osteomyelitis and psoas abscess in a patient with systemic lupus erythematosus disclosing positivity of pneumococcal urinary antigen assay.
Intern Med. 2011;50(20):2357-60. Epub 2011 Oct 15.(インパクトファクター=1.037)
金沢大学医学教育センター(リウマチ膠原病内科)、松村正巳先生によりますループス症例での肺炎球菌性膿瘍形成症例です。
松村先生が最近出版された著書もあります。
⑦Oishi G, Hodatsu A, Mori M, Fujioka K, Hayashi K, Konno T, Kawashiri MA, Yamagishi M.
Immediate disappearance of large thrombus in left atrium without evidence of
systemic embolization after heparin treatment
J Cardiology Case 2012 in press
現在小松市民病院で内科系救急医学後期研修中の大石岳先生によります。左房内巨大血栓症例の報告です。ヘパリン投与により、合併症なく速やかに血栓が消失した興味ある症例です。大石先生は、消化器、循環器を中心とした救急医学を目指しています。
いつも全力投球の大石 岳先生。現在小松市民病院で活躍中です。
⑧Tada H., Konno T , Aizu, M , Yokawa J , Tsubokawa T , Fujii H, Hayashi K , Uchiyama, K , Matsumura M, Kawano M, Kawashiri M , Yamagishi M.
Pulmonary hypertension associated with veno-occlusive disease in systemic sclerosis: Insight into the mechanism of resistance to vasodilator
J Cardiology Case 2012 in press
連投の疲れをみせない、多田隼人先生の症例報告です。強皮症にともなう肺高血圧症例へのPGI2製剤の使用です。静脈閉塞型の肺高血圧の場合、本剤により全身状態が悪化することがあり、この経過を詳細に記載した論文です。