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「ティアニー先生の診断入門」増刷中

2008.12.17 | Publications | 教育 |

おかげさまで,11月1日に出版させていただいた「ティアニー先生の診断入門」が医学書院で品切れとなりました。只今増刷中です。来年1月上旬には第2刷が店頭にでますので、お手に取っていただければ幸いです。

リウマチ・膠原病内科
松村正巳

「ティアニー先生の診断入門」
著者:ローレンス・ティアニー,松村正巳
価格:3,150円
医学書院刊

第一部 ティアニー先生の診断の入門―診断のプロセス
第二部 Case Study ―診断に至るプロセス

読みやすくかつ臨床の叡智を凝縮させた書

書評者:藤田 芳郎(トヨタ記念病院 腎・膠原病内科部長)

 本書の扉の推薦のことばに、ティアニー先生と16年間の親交がある青木眞先生の短い名文がある。その青木先生のおかげで、著者の松村先生と同様、私も数年来ティアニー先生に触れる機会を得ることができているが、本書によって改めてティアニー先生というエベレストがいかに出来上がったかを知ることができた。このように読みやすくかつ臨床の叡智を凝縮させた本書の出版に尽力された松村正巳先生に深謝したいと思う。
 臨床において大切なことの1つは、正しい診断とよりよい治療を求めて、権威的にも感情的にもならずに医療者が検討しあうという医療の透明性である。もう1つの推薦のことばを書かれた黒川清先生の名文にも感じる、そういう自由闊達な雰囲気の中でのレベルの高い日々の症例検討の産物が、ティアニー先生という怪物であると私は思ってきた。実際、ティアニー先生の教育は、自由で明るい雰囲気の中で行われる。
 本書では、ティアニー先生という作品ができるために必要不可欠な、それとは別の側面が、先生自身の言葉で語られる。「診断確定における最も大切なのは経験であり、決して本から学べるものではありません」とおっしゃりながらも、一流の教育者でもある先生は、その「経験」を伝えようとわかりやすい言葉で語ってくださっている。たった20ページの中で。
 先生の語る「経験」とは何か。本書をお読みいただくほかはないが、その「経験」を獲得していく過程は、患者さんとのきめ細かい熱心な対話とその分析、対話のなかから原因疾患を掘り起こそうとする努力の積み重ねにほかならず、そのことに強く感動させられた。きめの細かい熱心な対話とはどういうものか、患者さんとの対話をどういう風にしたらよいか、具体的な方法、先生の経験に基づいた方法が述べられている。そして最後に先生の出血大サービスともいうべき「経験」の珠玉、「トップ10パール」が述べられる。次に続く第2部はその応用編のケーススタディである。第2部では教育的症例が厳選され、辞書のように何度も使える鑑別診断の要がちりばめられており、松村先生の労作である。
 「食べ物というのは食われていのちを養うものとなり、残りは糞尿となって排泄されるわけで、(その食べ物を作る農、漁を担当する人は)いわゆる業績というものを残さない」(『文明を問い直す』梅津濟美著、八潮出版社)。いのちに近く働く者はいのちに近ければ近いほど、業績という目に見えるものは残しにくいが、そのかわり「経験」の叡智を獲得し、次世代に伝えたい。臨床(ベッドサイド)にいる我々に、そんな奮起を促し知恵を与えてくださる本書である。臨床医療に携わる全ての方に本書を推薦したい。

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